たっぷりチョコチップにカリッと食感。ステラおばさんの代表作「チョコレートチップクッキー」
2024/12/23
今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、創業から50年間変わらないおいしさのチョコレートチップクッキー。実はそこから進化を遂げた令和のチョコチップクッキーも展開中とか。株式会社アントステラ 代表取締役社長の村瀬光隆氏に、取材陣が伺いました。
株式会社アントステラ 代表取締役社長の村瀬光隆氏
―「ステラおばさんのクッキー」ブランドの歴史を教えてください。
村瀬 創業者はジョセフ・リー・ダンクルというアメリカ人です。1974年に日本でアイスクリームの製造販売をする株式会社ローリードールを創業しました。その後1982年に、彼の伯母にあたるステラおばさんがつくるクッキーを日本で広めようと思い立ちます。
「アントステラ(ステラおばさんのクッキー)」ブランドでアメリカンカントリークッキーを広めるべく、全国主要都市の有名百貨店、駅ビル、ファッションビル等へ積極的に展開していきました。創立25周年を機に社名を株式会社アントステラに変更。全国のショッピングセンター、駅ビルを中心に直営店は約66店舗展開し、クッキーを通じてお客様に幸せを届けてきました。しかしずっと順風満帆だったわけではなく、投資ファンドを経て2008年から森永製菓グループ会社の一員となっています。
会社としての転機は、2011年に「Pick&Mix」という新しい販売方法を取り入れたことでしょうか。お客様がご自分でトングをもって好きなものを選ぶというスタイルです。さらに翌年にはクッキーの詰め放題を実施。クッキーの9にちなんで毎月9のつく日に直営の一部で行っていますが、整理券を配る店も出てくるほどの人気イベントとなりました。
もともとあった、手作りの温かみを感じるステラおばさんのクッキーという商品に、自分で選ぶ喜びや、何枚詰められるか?どのクッキーを詰めようか?という体験価値が加わったことで、改めて商品価値を理解していただけるようになったのかな、と感じています。コロナ禍でダメージを受けましたが、お陰様で、2021年から4期連続で、過去最高の売り上げを達成する見込みです。
毎月9・19・29日の詰め放題企画は¥2,280(税込)で¥4,500分以上詰められると大好評。
―「ステラおばさん」は実在の人物だったのですね。
村瀬 幼稚園の先生をしていたそうです。いたずらをしてお尻を叩かれる子どももいたとか。ただこのステラおばさん、先生と呼ばれることはほとんどなくて、子どもたちからも「アントステラ(ステラおばさん)」と呼ばれて親しまれていたそうです。愛情からくる厳しさだと子どもたちがわかっていたんでしょうね。叩いた分だけ、手作りのクッキーやケーキを与えていたという話も残っています。
当社の創業者であるジョセフ・リー・ダンクル氏もステラおばさんが大好きで、いつも後ろをついて歩いていたそうです。そのクッキーを日本に紹介したいと話したとき、「クッキーやケーキを作るとき一番大切なのは、オーブンの温度じゃないんだよ。誰かのために作ろうっていう気持ちなんだよ」と諭したそうです。そんなステラおばさんの気持ちを “Warm Heart Communication” という会社の理念として受け継ぎ、1枚のクッキーが温かい心の交流のきっかけになればと願っています。
ギフトボックスにも小さく描かれている理念 “Warm Heart Communication”。
―村瀬社長のご就任は?
村瀬 私は大学卒業後森永製菓に入社し、営業やマーケティングに携わってきました。2015年に新領域創造事業部という新しい部署へ配属となり、直営事業を立ち上げたのです。「TAICHIRO MORINAGA」という、創業者の名を冠したブランドのダイレクトショップ。とても大変でしたが、直接お客様と接することが叶い、大変にやりがいを感じました。そこからグループ会社の1つであるアントステラに行きたいと希望し続け、2024年の春にようやくそれが実現しました。今は、アントステラのメンバーと一緒に次の未来を目指している状況です。
―ステラおばさんのクッキーの魅力は?
村瀬 私は森永製菓時代に多くのクッキーを手掛け、そのどれも自信をもってお客様に提供してきました。しかし、ステラおばさんのチョコレートチップクッキーを食べた時、そのおいしさに、驚きを覚えてしまいました。なぜこんなにおいしのかと……。いろいろ探ってみたところ、様々な工夫をしていることがわかりました。
カリっとした独特の食感を出すために、小麦粉を粒度とグルテンの粘度にこだわった独自のブレンドを使用することにはじまり、バターの扱い方、熱の入れ方など、工程の1つひとつに価値がありました。おいしいクッキー1枚1枚丁寧に思いを込めて製造しお届けしたいと思っております。
人気ナンバーワンのチョコレートチップは、チョコチップが大量に入っています。他の種類も具材がたっぷり混ざっているのがうちの特徴ですが、実は、たくさん混ぜると大量生産が難しくなります。高速回転で作るのが難しくなるのですが、創業時からのステラおばさんのレシピから、ほとんど変えていません。1枚1枚心を込めた手作り感を残しています。
「ステラおばさん」ブランドの代名詞ともいえるチョコレートチップクッキー。
大ぶりでチョコチップがたっぷり。1枚1枚表情が違うところにも手作り感を感じられる。
―クッキーの種類はどのくらいありますか?
村瀬 100種類近いレシピの中から、季節や店舗によって15~20種類を取り扱っています。オンラインストアでは個包装の詰合せが中心ですが、店舗ではクッキーの量り売りをしています。
チョコレートチップを筆頭に8種類18枚が入った「カントリーガゼット(M)」(¥1,782)など、
手軽なギフトやお得な詰め合わせがオンラインショップで手に入る。
―50年間不変のおいしさをキープする一方で、新商品も続々と。
村瀬 ステラおばさんの変わらぬおいしさを残すとともに、時代にアジャストした商品開発もしています。その1つが「ステラおばさんが夢のクッキー作っちゃった!」プロジェクト。ステラおばさんが夢見ていたものや、世界を旅して出会ったクッキーをテーマとして、新しいクッキーに挑戦しています。
これまでには、ケーキをオマージュしたソフトクッキー「ご褒美ケーキクッキー」や人気のクッキーの具材を限界まで増量した「増し増しクッキー」、「世界のステラおばさん」シリーズでは、台湾のパイナップルケーキ、フランスのタルトタタン、アメリカのアップルパイなどをアレンジしたクッキーを展開してきました。
2024年11月~2025年2月には、チョコレートチップを厚焼きにしてさらにチョコがけにした「厚焼きチョコがけクッキー」を発売。チョコがけは技術的にとても難しくて、実は1年前にも同じような商品を出し、そのときに見つかった課題をクリアしてブラッシュアップしました。森永製菓とも、開発部分では共有しながら更に良い品質を目指しています。チョコレートの扱い方などある程度のノウハウがあるのも助かっています。
商品の特性上、店舗での量り売りにのみ登場する「ステラおばさんが夢のクッキー作っちゃった!」シリーズ。
チョコレートチップクッキー、ダブルチョコナッツ、苺チョコチップを厚焼きにしてさらにチョコでコーティング。
上からビター、ミルク、ストロベリーの3種展開。
―開発のコンセプトは?
村瀬 実は、オンラインショップでも取り扱いのある冬季限定品「ステラズクッキーチョコセレクト」が先にできました。大変好評だったので、さらに夢を盛っちゃおうと、中のクッキーが厚焼きになったのです。
「夢のクッキー」は、期間限定ということもあり、どんどん挑戦ができるシリーズだと考えています。ステラおばさんというブランドの中で、ステラおばさんの想いを引き継ぎながらも、未来をつくるチャレンジをした方がいいんじゃないか、と。我々だからこそできるステラおばさんらしい味わいや個性ある商品づくりができるのを、とても楽しいと感じています。
通常の厚みのクッキーをチョココーティングした「ステラズクッキーチョコセレクト」(3種類5枚入り¥1,296(税込)~)。
―今後の展望をお聞かせください。
村瀬 森永製菓グループは、パーパス(使命)に「世代を超えて愛されるすこやかな食を創造し続け、世界の人々の笑顔を未来につなぎます」と掲げています。ステラおばさんのクッキーはまさにそれを体現できるのではないでしょうか。
お菓子って、小さな金額でも人に喜びや笑顔をお渡しできるものだと思っています。実際に、甘いものを食べると幸せホルモンであるセロトニンやドーパミンが分泌されることがわかっています。甘いものをもらって怒る人はあまりいないのではないでしょうか。
「Pick&Mix」の販売では、15種類ほどのクッキーを、自分の食べたい物、差し上げたい相手の好み、家族に食べてほしいものなど、いろいろな想像をしながら選んでいただいていると思うんですね。母子が「パパにはこれかな?」と会話をしながら一緒に選ぶかもしれない。生ケーキやドーナッツと違って1度に2枚3枚と食べられる。買うという体験がコミュニケーションに役立ち、おいしいクッキーを食べることで笑顔になっていただける……。クッキーから笑顔を創造できる、こんなに幸せなことはありませんね。そしてその笑顔を未来につなげることは簡単ではありませんが、50年企業であるアントステラが、さらに成長し光り輝くことで実現したいですね。
そのためには、新しいチャレンジがやはり必要で、今のメンバーとともに、新しい価値を生み出していきたいと思っています。「夢のクッキー」という場があるので、試行錯誤しながら、お客様の喜ばれる商品に挑戦していきます。この間は、チュロスという菓子を我々が表現したらどうなるんだろう?と、1店舗だけで販売してみました。様々課題は見つかりましたが、こういったスピーディなチャレンジにはこれからもトライしていくつもりです。ステラおばさんのチョコレートチップクッキーを大切に守り磨きながらつくる新しい価値……もしかしたらクッキーの枠から飛び出すかもしれませんよ。
―素晴らしいお話をありがとうございました!
「チョコレートチップクッキー」(2枚)
価格:¥194(税込)
店名:ステラおばさんのクッキー オンラインストア
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.stella-online.jp/fs/auntstella/80-0076095
オンラインショップ:https://www.stella-online.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
村瀬光隆(株式会社アントステラ 代表取締役社長)
1972年1月生まれ、横浜出身。明治大学経営学部卒業後、森永製菓株式会社に入社。東京・大阪で営業職経験を積み、マーケティングや新規事業を経て、2020年に菓子マーケティング部長就任。2024年3月より森永製菓株式会社グループ会社で、アメリカンカントリー焼き菓子専門店『ステラおばさんのクッキー』を展開する株式会社アントステラの代表取締役社長に就任。
<取材・文・撮影/植松由紀子 MC/田中香花 画像協力/アントステラ>