
純国産の鰻をなるべくたくさんの人へ。尋常ではない鰻愛がおいしさを育む、鹿児島産「千里うなぎ」
2025/01/16
価格の高騰が続き、年々贅沢品になりつつある鰻ですが、今回、編集長アッキーこと坂口明子が発見したのは、お値打ち価格の一品。鰻の生産高全国第1位の鹿児島県にて、おいしくて安心安全な鰻にこだわり続けている「千里うなぎ」の執行役員の堀内伸明氏に取材陣がお話を伺いました。

株式会社千里うなぎ販売 執行役員の堀内伸明氏
―堀内さんはもともと金融機関にお勤めだったとか。「千里うなぎ」との出会いを教えてください。
堀内 僕は大阪の銀行に勤めていまして、融資課にいたときに出会ったのが、現会長の久保正一でした。会長は鹿児島県桜島の出身なのですが、大阪府摂津市で「ニュー千里」という自動車関連の会社を経営していて、私が出会った時には、すでに鹿児島で養鰻事業も開始していました。
養鰻というのは、実は膨大な資金が必要なんです。しかも、稚魚の仕入れのために短期間で資金調達しなければなりません。そこで、養殖場の鰻を担保にする動産担保融資というものを組ませていただきました。そうなると、どうしても実際に現地で確認しなければならず、僕は何度も鹿児島にお伺いする機会があったんです。そこで鰻の魅力に出会いました。

鹿児島県大崎町の養鰻場。1面100坪ほどで60面ある。
鹿児島県では、広大な土地で大規模な養殖が行われている。
―御社の養鰻の特長を教えてください。
堀内 鹿児島の他、静岡などにも拠点があるのですが、多拠点でやっていて気づくのが、水によって味が全然変わるということです。鹿児島のものは脂がのっていて甘く、粘度が高くて舌にまとわりつくような食感です。静岡の方は、脂はサラサラしていて、さっぱりしています。
ということは水が味に影響するだろうということで、水の管理だけは、どこにも負けないくらいにやっていると自負しています。まず、井戸を掘って地下水を汲み上げて使用しています。また、本来はする必要はないのですが、飲料可検査を行い、人間が飲んでも大丈夫な水で育てています。温度や酸素含有量、濁り度(ORP値)などは、センサーで24時間管理しています。そのほかにも1日2回の亜硝酸の濃度検査なども行っています。

地下水で育てられている鰻たち。
常にセンサーで、温度やph度、酸素含有量などを管理している。
―水以外にも、餌なども工夫されているとか?
堀内 もちろん、餌も重要です。うちでは、朝4時と夕方4時に与えています。どうしても朝が早くなってしまうのですが、鰻は消化に7〜9時間かかるので、お腹を空っぽにするために12時間は空けたいとすると、このシフトになってしまいます。鰻が腹ペコの状態になった方が、たくさん食べてよく成長してくれるんです。
正直、僕は金融の出身なので、自動給食機にした方が効率が良いと考えてしまうのですが、職人の方たちは、暗いうちにきて、蓋を開けて、鰻の姿を目で見てから、これを入れようかとか、このくらいの量にしようとか、餌を判断しているので、言えないです(笑)。やっぱり僕は彼らが作っているものに感動して入社してますので。ラクしてほしいという気持ちもありつつ、こだわりを貫いてもらっています。

餌やりは、職人たちが毎日、鰻の様子を見てから体調などを考慮し、
ハーブを入れたり、酢を入れたりと工夫している。
―一番のこだわりのポイントは?
堀内 「匂い」を出さない、ということかと思います。魚の匂い、口の中がネガティブになるような匂いは絶対に出さない、ということでしょうか。それだけは徹底的にやっています。
通の方などは、そのちょっと嫌な香りこそが鰻だとおっしゃるかもしれないのですが、そうではない人が多数なのではないかなと思います。もともとたくさんの人に食べてほしいという創業者の思いがありますから、そこを大事にしています。

稚魚から全て完全に国産の鰻。
清潔な環境で丁寧に育てられたことが味にも反映されている。
たれは、九州らしい甘い醤油味で特製のもの。
―「たくさんの人に食べてもらう」ために、価格も考慮されている?
堀内 「適切な価格でなるべくたくさんの人に食べてほしい」というのが創業者の思いなんです。仮に高級ブランド化したとして、5千円、1万円の鰻って、どれだけの人が食べられるのか?というと、疑問です。
毎日食べることはできなくても、月に2〜3度は手が届くような、ちょっと元気が出る、栄養ドリンクのような、そのぐらいの立ち位置でいたい。なので、価格は上げたくないんです。

日常使いもしていただけるよう、
簡易包装で、お得な10尾、20尾のセットも用意している。
―生活者としてはありがたいです。でも、企業努力も必要になりますね?
堀内 そのために、再生油ボイラーなども活用しています。養殖用の水は年間を通して30度に保っているのですが、エンジンオイルなどの廃油を利用したものであれば、生精油よりもコストは安く抑えられますし、エコにもなります。太陽光発電ももちろん利用しています。設備投資は必要ですが、日々のランニングコストは抑えられて、商品価格を抑えることが可能です。
―お客様からはどんなお声がありますか?
堀内 ご高齢な方が定期的に買ってくださっている印象があります。90歳の方から、週1で食べてくださっているというお声もいただきました。
それと、白焼を買ってくださる方も多いです。もちろん、圧倒的に蒲焼の売上が高いのですが、一度白焼を購入されるとリピートしてくださる方が多い印象ですね。やはり素材がいいことをわかっていただけているんだなと思います。ごまかしが効かない商品なので。
個人的にも、白焼は鹿児島の鰻に合っていると感じます。先ほども申し上げた通り、脂がしっかりあるので、焼くだけでカリッとするというか、蒲焼とは違う食感で、少しパリパリと揚がったような感じがあって非常においしいです。

堀内氏もイチオシの白焼き。
脂のある鹿児島産だからこその味とのことで、新たな楽しみ方が増えそう。
―食べ方のおすすめは?
堀内 フライパンで焼いた方が絶対においしい、と僕は思います。レンジでもいいのですが、焼いた方が香ばしさが立つので、フライパンがおすすめです。焦げ付かないクッキングシートなどをしいていただいて、皮から焼いて、身の方も少し焦がすくらいに焼くと、お店の味に近づけると思います。

温め方のおすすめは、
クッキングシートを敷いたフライパンでしっかりめに焼くことだそう。
脂がたっぷりとのったふわふわの身に、カリカリした食感が加わる。

炊きたてのご飯にのせれば、でき上がり!
誰もが笑顔になり、元気になれるご馳走です。
―養殖方法から食べ方のコツまで、鰻の魅力を知ることができました。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

「蒲焼き3尾セット」(うなぎ蒲焼・きざみ)
価格:¥8,960(税込)
店名:千里うなぎオンラインショップ
電話:099-475-1177(9:00~17:00 土・日・祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://senriunagi.base.shop/items/36523675
オンラインショップ:https://senriunagi.base.shop/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
堀内伸明(株式会社千里養鰻 執行役員)
銀行でキャリアをスタート。祖父が会社を経営しており、経営が苦しい時も良い時も、近くで見てきた幼少期。お金の力の重要性を感じて金融機関へ就職。その後、人材コンサルタントを経て、現会長との偶然の再会をきっかけに養鰻の道へ。会社分割業務にも携わり、現在は執行役員として活躍中。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/田中香花 画像協力/千里うなぎ>