思わず二度見してしまうパッケージが「あられ」の常識を変えた!三真の「ラッキーマヨネーズ」
2025/02/03
今回、編集長アッキーこと坂口明子が注目したのは、従来のあられのイメージを覆すような、かわいいパッケージが人気の「ラッキーマヨネーズ」。実は社長自らが、デザイン、ネーミング、イラストまで手がけていると聞き、ますます興味津々。株式会社三真 代表取締役社長の加藤久幸氏に取材班がお話を伺ってきました。
株式会社三真 代表取締役社長の加藤久幸氏
―御社の歴史を教えてください。
加藤 「ピーセン」というお菓子をご存知でしょうか?80年前に、弊社の前身である「銀座江戸一」という会社で作っていたピーナッツ揚げです。当時、テレビコマーシャルなどもしていて、ひよこに並ぶ東京土産でした。その後「三真」になってからは50年になり、私で三代目です。その間ずっと「あられ」を作っている会社です。
―商品ラインナップがたくさんあるのですが、これは加藤社長になってからですか?
加藤 そうですね、先代などはやはり頑固で固い職人でしたから。例えば、我々が作っている「あられ」の主原料はもち米で、それ以外のうるち米などを使うのは邪道でした。私は30歳の頃に会社に入って、それでは面白くないと思って、他の材料も使おうとしましたが、やっぱり怒られました。
父や叔父といった先代たちが同時期に引退して、会社の経営自体もあまり良くなかった時に社長になり、その時に「もうダメだったらダメでもいい」と思って、色々な材料を使ってみたり、デザインも一新したりしました。
―その一つが「ラッキーマヨネーズ」ですか?
加藤 これはもう、わけがわからない感じですよね(笑)。実はこのパッケージは私が自分で書いたんです。「もうなんでもいいや」と思って、とにかく作ってみてコンビニさんに持って行ったら、「こんなの売れないよ」と最初は門前払いでした。でもしつこく「一回でいいから仕入れてみてほしい」と頼んだら、もう一気に、記録的なくらいに売れて、実は欠品したりもしました。
パッケージに中身の写真も会社名もないという斬新さ。
ネーミングもイラストも加藤社長自身の手によるもの。
―ブレイクの決め手はなんだったのでしょう?
加藤 「あられ」というと、年配の方がターゲットだったのですが、この商品を出すことによって女子高生から認知されるようになりました。10年少し前のことです。それから製品をシフトして、おいしいプラス楽しい商品を作っていくことに方向転換をしました。それで一気に商品数も増えてしまいました。
―もともと商品開発やデザインのお仕事を?
加藤 いえ、大学卒業後は商社にいました。実はサラリーマンは嫌だな、と思いながら働いていて(笑)。ある時父に「継がないか」と言われ、やっぱり自分達のブランドで商品を世の中に出せるってすごいことだと思いました。小さな会社だとしても、大手と同じように、「三真」というブランドで商品が出せるのですから。メーカーって楽しいだろうなと思って、その頃は赤字企業でしたが、入ることに決めました。
入社5、6年後に作ったのが「やわらかぬれもち」という、もちもちしたおかきです。日本人はお餅が好きなのになぜか日常では食べないよね、ということから発想して、袋から開けてすぐ食べられ、レンジで加熱すればトロトロのお餅になるという商品です。それが一気にヒットして、おかげである程度の借金を返済し、千葉県内に新工場を建てることが出来ました。
千葉県にある現在の工場。「あられちゃん家」という直売場があり、
レストラン、ピクニックができる広場もあり、なんとヤギまで飼っているそう。
今や、地元の人はもちろん、観光客にも人気のテーマパーク的存在。
直売所で購入できる「とても美味しい 柿の種」。
昔ながらの製法で、木の箱の中で「寝かせて」、適度に乾燥させるという工程があるため、
出来上がるのに2週間かかるという。量販のものとは一線を画すおいしさ。
―そこからどんどん新商品を開発された?
加藤 工場の中に直売所を作ったのですが、そこで新商品をどんどんお客さんに出して食べてもらいました。その場でテストマーケティングができるので、これは売れるな、売れないな、とかがわかるようになりました。
「ラッキーマヨネーズ」の前には、「巣鴨古奈屋クリーミーカレーうどん匠揚げ」、陳建一さんの「赤坂四川麻婆辣油米菓」などなど、コラボ商品もたくさん作っていました。
さまざまな人気店と新商品を開発し続けている。
左から、「銀座ナイルレストラン」「巣鴨古茶屋」「焼肉TORAJI」とのコラボ商品。
加藤 「なだ万のクリームチーズおかき」は今でも売れ続けている商品です。「なだ万」はやはりハードルが高くて、他にもコラボの話はあったらしいのですが、商品化が実現したことはなかったそうです。2年位かかりましたが、初めてお菓子でのコラボが成功しました。「欧風にしよう」という戦略が良かったんだと思います。やはり「なだ万」さんのおかきだと出汁とかホタテだとなんとなくイメージできてしまうでしょう?それよりも違うものの方がインパクトが強いと思ったんです。オーナーから怒られるかと思ったのですが、「意外と面白いね」と言われました。正攻法じゃないのが、かえって良かったようです。
なだ万とのコラボ商品。クリームチーズの濃厚な味と、
香りたつベーコン風味に和辛子仕立てでアクセントをくわえた味と
食感の異なる2種類のおかきをミックス。
―どれも、パッケージには並々ならぬこだわりがありますね?
加藤 例えば20年ほど前に発売した「ソースせんべい」ですが、これはクラフトのパッケージにしました。クラフトを使ったのは、多分うちが初めてだと思います。駄菓子のソースせんべいをイメージしているので、アルミじゃなくて紙にしたかったんです。
こだわりのクラフトのパッケージ。レトロ感があり、他にはない質感が目をひく。
加藤 やっぱりスーパーでもコンビニでも、何十種類も商品がある中で、二度見してもらえないとダメなんですね。二度見して面白いなって手に取ってもらえるものにしないとダメ。だから、デザインが一番だと私はいつも言っています。私の場合、商品名とデザインが先で、それを開発チームに渡して、こういう中身を作ってほしいと言って渡している感じです。社長命令なのでスピードは早いです、失敗もしますけど。
―「ラッキーマヨネーズ」はどんな開発経緯だったのですか?
加藤 これは30年目にマヨネーズおかきというものを作っていたんです。その頃大ヒットしていたのですが、ある時期から売れなくなって終売していました。それをリニューアル復刻しました。
仕入れ先には、「なにこれ?」って言われて、中身が見えなきゃダメとか、会社名は入れないのかとかと言われました。私としては、デザインがとにかく大事なので、会社名もデザインが崩れるから入れませんでした。
そうしたら、女子高生に見つかったり、雑貨屋さんが仕入れてくれたりしたんです。想定外だったのですが、洋服屋さんなんかでも売られていました。名前も「ラッキー」なので、ちょっとしたお土産にちょうど良かったのかもしれません。
「ラッキーシリーズ」は今では味バリエもたくさん。
ゆるいイラストが女子高生を中心に大ヒットしている。
「ラッキーわさびマヨ」からは、御息女がイラストを担当。
―今後の展開を教えてください
加藤 高くておいしいものは世の中にいっぱいあると思うのですが、コストを抑えて、楽しくておいしいものというのはなかなかないと思うので、追求していきたいです。
それから、「たぶん…世界一小さいチョコレート工場」をさらに展開していきます。ずっとあられや煎餅を作り続けてきて、もうしょっぱいものはやり尽くした感じもあって、チョコレートに向かいました。何も知識がない中で息子に任せたのですが、世の中にまだないものを開発しようということで始めました。
オープン当初はそこまで盛り上がると思っていなかったのですが、これが意外にお客さんに来てもらうことができまして、これから館山にもスイーツセンター店がオープンします。そこでしか食べられない、今までにないチョコレートのドーナツを販売予定です。
2021年、千葉県にオープンした「たぶん…世界一小さいチョコレート工場」。
コロナ禍を払拭しようと、「とりあえずやってみよう」精神で始めたそう。
初日は、1日で1週間分の在庫がなくなるほどの大盛況だった。
チョコレートのラインナップも豊富。
お土産や自分用に、ついついたくさん購入してしまいそうな楽しさがある。
加藤 かつて叔父にスーパーに連れていかれて、ズラーっと並ぶ商品の前で、「開発っていうのは、ここにないものを作ればいいんだよ」と言われたのを覚えています。無限にあるようでこれがむずかしい。でも、人と同じことは性格的にもあまりやりたくないし、違うことをする方が楽しいかなと思っています。
―楽しそうに製品づくりをされている皆さんの笑顔が、商品からも見えるようです。本日は貴重なお話をありがとうございました。
「ラッキーマヨネーズ」
価格:¥130(税込)
店名:あられちゃん家
電話:0120-913-961(9:00~16:00 土・日・祝日、年末年始除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.ararechanchi.com/shopdetail/000000000127/ct24/page1/order/
オンラインショップ:https://shop.ararechanchi.com/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
加藤久幸(株式会社三真 代表取締役社長)
1965年東京都生まれ。大学卒業後、1995年に入社。2010年に同社代表取締役に就任。事業承継をきっかけに様々な企画・コラボ商品を生み出し、創作米菓というジャンルを確立し現在に至る。定番商品販売やOEM製造だけでなく、オリジナリティーのある自社企画商品で新たな販路を開拓。老舗飲食店等とのコラボなど、企画から開発、製造に至るまで圧倒的なスピードで展開している。
<文・撮影/尾崎真佐子 MC/田中香花 画像協力/三真>