スイーツ王国・帯広で50年愛され続けるスイートポテトは、しっとりホクホク素朴な手作りの味!

2025/02/06

全国的にも有名なスイーツ店やカフェなどが軒を連ね、スイーツ王国として知られる北海道・帯広市。今回アッキーこと坂口明子編集長の目に留まったのは、その帯広に行ったら必ず訪れたいとスイーツマニアの間で評判の洋菓子店「クランベリー」のスイートポテトです。地元密着店の看板商品として50年以上愛され続ける逸品について、株式会社クランベリーの代表取締役社長である水戸部公平氏にスタッフがインタビューしました。

株式会社クランベリー 代表取締役社長の水戸部 公平氏

―見たこともないくらい大きなスイートポテトが届いてびっくりしました!

水戸部 オンライン販売でお届けするスイートポテトは、1,500円相当の大きさのものをご提供しています。サツマイモの皮を容器として使っていることもあり、ずっしりと巨大なサツマイモが1本届いたように見えるかもしれませんね。

メガネと比べると一目瞭然。一般的なスイートポテトとは、サイズ感がまるで違う!

カッティングボードに乗せても、はみ出すほどの大きさ。

―どなたが開発されたのでしょうか。

水戸部 わが社の創業者である父のアイデアで開発されて、創業1、2年目くらいには商品化していたようです。もともと弊社は町の小さなケーキ屋さんからスタートしたのですが、ショートケーキやクッキーだけではない何か新しい商品を作ろう、と考えついたのがスイートポテトだったそうです。とはいえあちこちでスイートポテトは販売されていますから、目新しさが必要です。普通だとサツマイモのペーストをタルトのように型に絞るところ、皮を丸ごと容器代わりに使うことで面白さを出してみよう、となったとのことでした。

カットして裏返してみたら、まんまサツマイモの皮が!
容器として使っているので、状態によっては皮が食べられない場合もあるそう。

―お店の創業はいつ頃ですか?

水戸部 1972年、私が生まれて半年後にオープンしています。店と私は同い年で、私が52歳になりましたから、創業52年ということになります。

―乳飲み児を抱えて新規開店するのは、とても大変だったでしょうね。

水戸部 いやぁ、昭和の男ですから(笑)、子育てなど顧みずパティシエの仕事にひたすら情熱を注いでいたみたいですよ、父は。大変だったのは母ですかね。当時、私をおんぶして母も店に出たりしていたようで、何年か経って成長した私が店にいると、お客さまから「あの時おんぶしていたお子さん?」などと声をかけられたりしたものです。

父は一昨年亡くなりましたが、中学を卒業してすぐいろいろな職を転々としたそうです。たまたま就職したパン屋さんで洋菓子部門に配属され、これだ、と思い一念発起してパティシエとして自分の店を持ち、スイートポテトというヒット商品の開発までしたのですから、頑張ったと思います。父のアイデアとこだわりが実って、スイートポテトは私が幼稚園の頃には近所でも評判の商品に。気付けば売り上げの半分はスイートポテトという、店の名物になっていました。

―そういえばお店のショーケースに並んでいるのが、パン屋のパンみたいにも見えます。

水戸部 父は就職先でパンを作っていたというわけではないのですが、確かに普通のケーキ屋さんのショーケースとはちょっと違いますよね(笑)。店頭ではスイートポテトを、100g270円で一本単位の量り売りしているので、大きさも形もさまざまなんです。コロンとした丸いのもあればグローブみたいに大きいもの、もちろん普通に細長いのもあって、仕入れたサツマイモの形状次第。 食べたい時に食べたい量だけ買っていける、この量り売りのアイデアもうけて、看板商品へと成長していきました。お取り寄せでは、約12×22.5×7㎝の細長い専用箱に入るサイズのものを、お送りしています。

アンデルセン童話の優しい絵柄がプリントされたボックスにも、お父さまのぬくもりと愛情が感じられる。

―水戸部社長ご自身の、ご入社の経緯を教えてください。

水戸部 生まれた時は実家は小さなケーキ屋さんでしたが、小5の時に本店を建て替え、4階建てのビルになりました。子どもながらにこれはえらいことになったな、と(笑)。 継がなければ、という意識が芽生え始めました。店舗と同じビル内に住んでいたので、お菓子作りを手伝わされたり、店番をしたりと、自然と店に溶け込んでいった感じです。札幌の大学を卒業後、仙台にある洋菓子店に就職して、4年間勤務しました。卒業時には実家の店が3店舗に拡大していたので、実家より規模が大きめのところで経営のノウハウを学びたかったのです。

―お父さまの跡を継いで、パティシエになるわけではなかったのですね。

水戸部 小さい頃から父の傍でお菓子作りを見ていて、店舗が増えてくると一人で作るには限度がある、ということがわかりました。全部自分の手を介して作ることができないとなると、商品への思いやこだわりを守るためにも「販売」「営業」といったところが大事になると考えたのです。
実家に戻って10年後の2010年、突然父に「今期から社長をやれ」と言われ、代表取締役に就任。まさに寝耳に水でした。ただ、それまでも販売・経営の実務を経験していましたから、働き方はあまり変わりません。父はとりあえず一線は退いて、でも相変わらず店には顔を出す、会長的な役割で支えてくれていました。

―「クランベリー」という店名の由来は何ですか?

水戸部 以前は別の名前だったのですが、変更する必要が出て、2000年、ちょうど私が帯広に戻ったタイミングで社名変更しました。地元の新聞社を通じて公募したり、社内のスタッフにも案を募って、集まったアイデアのなかから当時の社長である父が決めたんです。クランベリーという果実の名前って、あまりメジャーじゃないですよね。ストロベリーやラズベリーは知っていても、「変わった名前だなあ、お菓子屋さんぽくないし、これはないよね」なんて私は言っていたんですが(笑)、「赤くて健康にいいし響きもよい。誰も知らない果実の名は、ありきたりじゃなくて新鮮味がある」と言って、父の第6感にピンと来たみたいです。

赤い果実の色がイメージカラーに。店頭で商品を入れる袋やパンフレットも、美しいクランベリーカラー。

―スイートポテト作りで、これだけは譲れないという点はありますか?

水戸部 父のレシピを変えない、ということですね。サツマイモの自然の甘さを大切に、ひとつひとつ手作りして焼き上げることにこだわったレシピです。サツマイモの甘味はその時々で違いますが、砂糖やバターの分量はいっさい変えません。唯一、ペーストのかたさを調節する牛乳の量だけは変えますが、普通スイートポテトを作る時の材料となる生クリームもラム酒も使いません。というか、私は牛乳を使うレシピしか知らないのです(笑)。

―しっとりホクホクとした、サツマイモらしい味がします。

水戸部 昔ながらの紅あずまというサツマイモの品種を使っています。ほどよい食感を残しながらペーストにし、甘さ控えめのカスタードクリームをほんのりと忍ばせることで、開発当初からの素朴な味わいをキープし続けています。

皮付近にあるカスタードクリームが、優しいおいしさを醸し出すアクセントに。

水戸部 本来、商品の味を一定に保とうとするならば、サツマイモの収穫場所や時季によって加える調味料の分量も変えなければならないのですが、弊社は甘味が足りないから砂糖を増やそう、とはしません。リピーターのお客さまから「前と味が違いますよね」とお叱りを受けることもあるのですが、「元のサツマイモが違うんだから当たり前」「素材そのものの味を楽しんでもらいたい」、というのが父の口癖でした。むしろその変化を楽しむたくさんの常連のお客さまに支えられて、貫き通すことができた50年だと思っています。

ちなみに台風がたくさん来るなど、天候不順が続いた時に収穫したサツマイモは水分が多くベチャっとしていることがあるのですが、さすがに脱水するわけにもいかず、トロリとしたスイートポテトが出来上がります。そこも含めて「クランベリー」のスイートポテトだと思っていただけるとありがたいですね。

―おすすめの食べ方はありますか?

水戸部 お取り寄せの場合、冷凍便で届きますから、袋のまま電子レンジで温めるか、冷蔵庫でゆっくり解凍して、召し上がってください。温かいか冷たいか、お好みでどうぞ。

温める場合は、冷凍の状態から、届いた袋のまま電子レンジ(500W)で8~10分が目安。

―相性のいい飲み物は何ですか?

水戸部 何とでも合うのですが、強いて言えば、食べると冷たい牛乳が飲みたくなると聞くことがあります。温めたスイートポテトはホクホクして、口の中の水分が持っていかれるからかもしれませんね。

子どもたちのおやつ代わりに、チンした大きなスイートポテトと冷たいミルクが大人気。

―イートインで人気の食べ方は?

水戸部 全5店舗中2店舗に併設している喫茶のコーナーでは、スイートポテトセット(カットされたスイートポテトとお好きな飲み物のセット)をおすすめしており、ホットコーヒーを頼まれる方が多いです。

お腹にたまるスイートポテトは、大き目に切ってコーヒーと共にランチにしても。

―サツマイモなので、和テイストとも相性がよさそうです。

水戸部 冷たいスイートポテトはしっとりと重ためですから、温かい緑茶と相性がいいかもしれません。じつはリピーターの方は、「冷やして食べる方が好き」とおっしゃる率が高いんですよ。

ゆっくり解凍するときれいにカットできるので、来客時のお茶のおもてなしにもぴったり。

―スイートポテト作りで生じる困難やご苦労をお聞かせください。

水戸部 器に使う皮を破かずに繰り抜くのが大変ですかね。パティシエとは別にスイートポテト部隊がおりまして、昔も今もひとつずつ手作業で繰り抜いているのですが、相当なコツがいるんですよ。私が子どもの頃から働いている方などは、40年近く、ずっとスイートポテトを作っているんです。当時はパートのお姉さん?おばさん?だったのが、今ではおばあさんになっていたり。でもスイートポテトの成型だけは誰よりも、パティシエよりも上手、その道のプロです。お店のヒストリーも一緒にぜんぶ見てきています。

―原料となるサツマイモはどのように仕入れるのですか?

水戸部 先ほど申し上げた紅あずまという品種を、問屋さんに買い付けてもらいます。サツマイモは秋冬が旬ですから、1年中途切れることなく買い付けていくのは、ちょっと大変なのですが。さらにこの紅あずま、じつは絶滅の危機に瀕しているのです。というのも、40年くらい前まで焼きイモといえば8割がた、この紅あずまを使ったホクホク系が主流でした。ところが近年、品種改良が進んで紅はるかという蜜イモのように甘いねっとり系が市場を占めてきています。焼きイモで食べる時にスルッとむけやすいよう皮が薄く、水分量が多い、弊社のスイートポテトには不向きな品種。さあ困った、ということで試行錯誤の真っ最中です。

―今後、道外や帯広以外に事業を拡大するお気持ちはありますか。

水戸部 現在、帯広市内に4店舗、同じ十勝エリアの幕別町に1店舗、計5店舗展開しておりますが、当分は地元にこだわっていきたいと考えています。ここ帯広で店をはじめ、地元の皆さんに大きくしていただいた商売ですから、地元の名産となり、わざわざ帯広まで食べに来ていただくきっかけとなることで、地元に恩返しできるといいなと思うのです。父も常々「常設店は十勝、帯広だけ」「北海道展や物産展など短期のイベントのみ出店」と言っていました。今後もその思いを受け継ぎ、帯広の名産品として発信していくことを信念としていきます。

ボックスの側面にも、帯広が位置する十勝平野への思いが伝わるイラストが。

―オンライン通販では、どんなお客さまが多いですか?

水戸部 道外からのお客さまが圧倒的に多いです。帯広に旅行に来てお土産に買って気に入ってくださった方、物産展や北海道展で買ってまた食べたいと思ってくださった方など、リピーターが多いのも特徴です。特に物産展は、全国各地の百貨店に1980年代から実演販売しながら出店しておりますので、当店の味を知っていただくよいきっかけとなっているようです。
道外からのご注文ですと、冷凍配送ですしどうしても送料がそれなりにかかってしまうことが、心苦しく歯がゆいところです。できれば1本だけでなく2本以上、なるべく送料に見合うような本数に調整してご購入されることをお勧めします。また、コロナ禍以降、帯広市のふるさと納税の返礼品としても扱ってもらっていますので、活用してみてください。

スイーツが届いたとは思えないくらい、ずっしり重量感のある冷凍の宅配便が到着。

―では最後に、今後のビジョンや展望をお願いします。

水戸部 じつは今、北海道産サツマイモの試験栽培に携わっています。もともと寒冷地である北海道は、日照時間や温度が足りなくてサツマイモの栽培には適さず、道外から仕入れていたのです。ところが地球温暖化の影響もあり、寒い地方でも育つ紅あずまの品種改良が進んでかなり大きいものが収穫できるようになりました。先ほど申し上げたように、昔ながらの紅あずまは絶滅の危機ですが、直系の新品種が、遜色ない状態で栽培できるのです。ゆくゆくは北海道で育った紅あずま、もしくはその後継品種を使ってスイートポテトをつくります!

―それは素晴らしいですね!

水戸部 帯広の洋菓子屋として商売をはじめ、地元のお客さまに支持していただき、育てられ、を繰り返した50年でした。今度はこちらが地域に貢献する番です。5年後になるか10年後になるかわかりませんが、もともと北海道にはなかったサツマイモを使って、北海道産サツマイモのスイートポテトを作るのが夢なのです。それを、「クランベリー」のスイートポテトファンの方にぜひ食べていただきたい! 十勝の農業の発展にも繋がる夢の実現に向け、ひたすら邁進します。

―北海道産サツマイモを使ったスイートポテトの完成が楽しみです!本日は、ありがとうございました。

「スイートポテト」(1本約555g)
価格:¥1,500(税込)
店名:クランベリー
電話:0155-66-8236(9:00~15:00 土日祝休)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.cranberry.jp/onlineshop/products/detail/1
オンラインショップ:https://www.cranberry.jp/onlineshop/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

水戸部 公平(株式会社クランベリー 代表取締役社長)
1972年、北海道帯広市生まれ。大学卒業後、仙台市の洋菓子店に入社。4年間の勤務を経て1999年に実家である洋菓子の店アンデルセンに入社。2000年に株式会社クランベリーに社名変更し、2010年に同社代表取締役社長に就任。

<文・撮影/亀田由美子 MC/田中香花 画像協力/クランベリー>

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