
相撲部屋の伝統レシピにおいしさへのこだわりを詰め込んだ「九重部屋直伝ちゃんこ鍋セット」
2025/02/07
今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、屈強な力士の力の源、ちゃんこ鍋。歴史ある相撲部屋直伝の味は、肉、魚、野菜をたっぷり贅沢に味わえる逸品です。株式会社冨士 代表取締役の齋藤昭一氏に、取材陣が伺いました。

株式会社冨士 代表取締役の齋藤昭一氏
―齋藤社長のご経歴からお聞かせください。
齋藤 東京都大田区で生まれ、28歳まで力士として九重部屋に所属していました。引退後1年くらい、この先何をしようかと、いろいろな人に教えを受けながら過ごし、大阪出身の妻の父が食肉加工と卸業をしていたことから、大阪にステーキハウスをオープンすることになりました。子どもの頃から食べることが好きで、食で皆さまに喜んでいただきたいという気持ちがありましたから。1986年に1号店「BigJoe藤井寺店」をオープンし、和食店「味喰笑(ビッグジョー)羽曳野店」を含めた3店舗を運営しています。飲食業をはじめてかれこれ40年ほどになりますね。

「味喰笑 羽曳野店」でちゃんこ鍋をメニュー化。
-ステーキハウスの次が和食の店となったのは?
齋藤 外食店としてちゃんこ屋が増えてきた頃、もともと力士ですから、僕が親しんだ九重部屋の味を提供しようと思い立ちました。
-ちゃんこ鍋について教えてください。
齋藤 力士が食べる料理全般を「ちゃんこ」と呼び、その代表料理とも言える鍋料理を指します。名前の由来は、江戸時代に長崎巡業を行なった際、中国から長崎に伝わった板金製の鍋「チャンクオ」の料理法を取り入れたという説や、若い力士が料理番を「おやじさん」の意味で「ちゃん」と呼び、親しみを表す接尾語「こ」が付いたとする説などがあります。
ちゃんこ鍋は、部屋ごとに秘伝の作り方があり、先輩から下の人間に受け継いでいくもの。今でこそ、トマト味やカレー風味などいろいろな味がありますが、伝統的にはソップ(鶏がらスープ)炊きや塩炊き、醤油ベースが多かったですね。
-「九重部屋直伝 ちゃんこ鍋」はどのようなものですか?
齋藤 自分が九重部屋に入門した当時から先輩たちが作っていた味がベースになっています。そうはいっても、相撲部屋では大きな鍋で大量に作ります。それがおいしさのポイントでもあって、一般家庭向けの4~5人前でどうやってそのおいしさに近づけようか、苦心しました。

九重部屋に代々伝わるちゃんこ鍋を一般家庭向けにアレンジ。
-具体的には?
齋藤 例えばスープ。スープは、野菜や肉や魚と、具材を煮込むにつれて味が変わっていきますが、ベースは大切です。部屋で作るときは、醤油やみりんを入れながら味を作っていくのですが、そのままでは日持ちがしませんし、炊くと味がぶれることがわかりました。そこで、業界大手のメーカーさんと協同で顆粒スープを開発したのです。
作っては改善してを何千回と繰り返し、日持ちのする包装材を求め、実に3年をかけて、2リットルの湯に1袋入れたらこの味になるという顆粒スープ(後に粉末スープへと進化)を完成させました。醤油ベースでチキンや魚介の旨みが効いた特製ちゃんこスープ。日本人の舌に合う、どんな素材ともけんかをしない味になっていると思います。炒めた具材にかけてチャーハンにするなど、アレンジもできます。外国人にも好評の味なんですよ。

3年の月日をかけて作り上げたスープ。手軽で味のブレがなく、いろいろな料理にアレンジも自在。
-具材についても教えてください。
齋藤 牛、豚、鶏と3種の肉に鶏つくね、魚介はタラにエビにイワシのつみれ。野菜は白菜や青菜、人参、大根にネギ。豆腐に油揚げ、こんにゃくに締めのちゃんぽん麺と、一通りそろえています。肉類は、義父の精肉会社から良いものを仕入れています。実は、イワシのつみれにも牛肉を入れているんですよ。元は、ステーキハウスでどうしても出てしまう牛の切れ端を入れてみたのが始まりです。すると、ひと味違った味わいになり、冷凍したときのイワシの臭みを抑えることにもつながり、大成功。今ではステーキハウスの余り肉では足りなくなっています。
野菜は季節によって変わります。実は野菜は、安価な時期が一番おいしいのです。旬でたくさん獲れるということですからね。冬は春菊ですが、旬でない時期は空心菜などに変えています。野菜は、天候や災害によって取れる量やクオリティが変わりますから、産地を変えたり種類を変えたりといった工夫をして、常に一定のおいしさを提供できるよう心がけています。
野菜へのこだわりがもう1つ。必ず手切りしているところです。機械切りに比べて格段においしいと思います。白菜も、軸の部分と柔らかい葉の部分を切り分けるには手切りの方がうまくいきます。見栄えも味わいも手切りがいいですね。


バリエーション豊かでたっぷりの食材が贅沢に盛り付けられて届く。
-ちゃんこ鍋としてもっともこだわっているポイントは?
齋藤 自分が好きか、おいしいと思うかどうかです。嫌いなものは絶対に出したくない。自分がおいしいと感じないものを買って食べていただきたくない。そのこだわりは強い方だと思います。冬場はトマトがおいしくないので、ステーキハウスの方では冬季にトマトを自家製の赤い酢漬け大根に替えて出しています。うちのちゃんこ鍋は、脇役になりがちなわかめがたっぷり入っています。それも自分が好きだから。煮たわかめは、とってもおいしいんですよ。ちょろっとしか入ってないのは嫌で、いっぱい食べたい(笑)。生のわかめは年間通して安定供給が難しいので、その時々で、各地のおいしいわかめを厳選しています。

肉も野菜も魚介も、そしてわかめもたっぷり食べられる味喰笑のちゃんこ鍋。
-お客様への想いをお聞かせください。
齋藤 飲食業を始めて約40年。ちゃんこ鍋のお取り寄せセットを作ってからも30年くらいが経っています。リピーターの方も多く、子どもの頃に食べた方が自分の子どもに食べさせてくださったりもして、「あの頃と変わらぬおいしさですね」というお声をいただきます。
通販で1万円以上と、決して安くない商品だと思いますが、季節に応じた旬の野菜を使うことで野菜の高騰には対処するなど、多少原価が上がっても、喜んでいただけることの方を大切にしたいと努力しています。
通販商品に関して言えば、宅配業者さんにバトンタッチしたらゆだねるしかないんですが、事故のないように、無事にお手元まで届くようにといつもハラハラします。夏場は悪くならないよう保冷剤の数、宅配業者さんの事故、大雪などの天候まで気になります。店で食べておいしかったからご両親に贈りたいとか、年末年始など人が集まるときに食べたいなど、お客様の想いに答えたいですからね。
-今後の展望を。
齋藤 それこそ、トマト味だカレー味だという新しい商品の開発は、次世代に任せようと思っています。私は、最後にチーズを入れるのもおすすめですというような、アレンジやちょっとした味変の提案をしていく程度かな。
時折、1人鍋も欲しいというリクエストをいただきます。実店舗のテイクアウト商品には「1人前ちゃんこ鍋セット」(¥1,250)のご用意がありますが、お取り寄せ商品にするかどうかは……。というのも、自分にとってちゃんこ鍋とは、やはり、大勢で囲んだ相撲部屋の思い出が出発点。家庭の鍋料理も、家族みんなで囲む風景が思い浮かびます。核家族が増え、子どもも少なくなってはいますが、鍋料理をするからにはみんなで囲んで食べてほしいという思いが強いんでしょうね。このセットも、4~5人前としていますが、結構なボリュームがあると思います。2人くらいで召し上がる方もいらっしゃいますが(笑)。
とにかく、うちのちゃんこを購入いただきありがとうございますという気持ちだけです。食べて幸せを感じていただけたら嬉しいですね。

大勢でわいわい囲むからこそのおいしさがあるちゃんこ鍋。
-素晴らしいお話をありがとうございました!

「九重部屋直伝ちゃんこ鍋セット(冷蔵)」
価格:¥11,800(税込/4~5人前)
店名:びっぐじょう(味喰笑&ビッグジョー)通販
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:http://fujibigjoe.shop-pro.jp/?pid=102902059
オンラインショップ:http://fujibigjoe.shop-pro.jp/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
齋藤昭一(株式会社冨士 代表取締役)
1956年東京都生まれ。1971年に大相撲で初土俵を踏む。九重部屋に所属し、最高位は東前頭2枚目。1984年に引退をした後、1986年に念願のステーキハウスを大阪府藤井寺市にオープン(BigJoe藤井寺店) 。続け、2号店(味喰笑羽曳野店、ちゃんこ場)、3号店(BigJoe富田林店)と南河内エリアに根付き、約40年、レストラン経営を通じて地域の皆さまに貢献できる事を目指し、現在に至る。
<文・撮影/植松由紀子 MC/田中香花 画像協力/冨士>