焼酎好きにはたまらない! 黒麹を使った大麦焼酎「吉兆安心院蔵」

2025/03/05

大分県宇佐市と言えば、全国に約4万社あるとされる八幡神社の総本宮「宇佐神宮」で知られる場所。その宇佐神宮から30分ほど車で走った先にあるのが安心院、「あじむ」という珍しい読み方をする土地です。そんな安心院で編集長アッキーこと坂口明子が気になったのが、黒麹で仕込んだ麦焼酎「吉兆安心院蔵」。一般的な麦焼酎とはどんなところが異なるのか、気になることを、縣屋(あがたや)酒造株式会社の代表取締役 森栄司氏に取材陣が伺いました。

縣屋(あがたや)酒造株式会社 代表取締役 森栄司氏

―森社長は大分のご出身とのこと。

森 そうですね、大分県の宇佐市安心院町(あじむまち)出身です。学校を卒業後、20歳の時に別府市の杉乃井ホテルに就職しまして、71歳まで勤めていました。なぜ現在、縣屋(あがたや)酒造にいるのかというと、4年前にこちらの当主が病気で倒れてしまいまして、女将が妻のいとこ、子供がはとこ同士だった縁で、私が代表となりました。まさか自分が経営者になるなんて、と驚いています。

―御社の沿革を伺えますか?

森 縣屋(あがたや)酒造の創業は1712年で、聞いたところによると大分で最古の蔵元であるとのことです。先祖はもともと栃木の出身で、宇都宮姓でしたが、豊臣秀吉の命で九州に移りました。しかしこの辺りは黒田官兵衛が統治しており、中津に入った宇都宮は黒田主催の酒宴の席で闇討ちに遭ってしまいます。ただ、その時たまたま妊娠していた女性とその子孫が生き延びました。

子孫はその後、大分県中津城主「奥平家」の家臣となり重松姓をいただきますが、その子孫の時代に商人に下り、醸造業を始めました。重松家はそこから300年続き、現在は十五代目となっています。弊社にも重松という姓の社員がおりまして、もともとは保育士をしていたのですが、将来は直系の方に継いでいただきたいと私からお願いして2年ほど前に入社してもらいました。

創業から300年以上の歴史を誇る縣屋酒造株式会社。

―安心院はどんな土地なのですか?

森 安心院は非常に自然が豊かな土地で、特産品はブドウやスッポンです。盆地で昔は全体が池だったことからスッポンが生息しています。うちの家の前の川でも、スッポンが甲羅干ししている姿をよく見かけますよ(笑)。また観光資源としては「鏝絵(こてえ)」というものがあります。家を建てる時、左官さんが腕を競って漆喰で登り竜や虎の絵を作ったりしたもので、うちの酒蔵にある鏝絵も非常に見事です。虎と登り竜、富士山が描かれています。

縣屋酒造株式会社で見ることができる鏝絵(こてえ)。

そして水もものすごく綺麗な土地で、これが酒造りに適している理由です。学者の方に分析をお願いしたところ、現在、井戸に出ている湯布山系の伏流水は、今から100年ぐらい前のものだろうと言うことでした。じっくり濾過され、良い水となって町に届いているのです。

―そんな恵まれた土地で、御社が造っておられるお酒について聞かせてください。

森 今回ご紹介させていただいた「吉兆安心院蔵」は、厳選した大麦を35%磨き、黒麴で仕込んだ麦焼酎です。常圧蒸留方式で蒸留することで、麦本来の香ばしさを引き出しました。しっかりとした骨格で、ガツンと味わえるのが特長です。

黒麴特有の濃厚で甘い旨み、切れのいい後味を感じられる「吉兆安心院蔵」。

―製造のこだわりについて伺えますか?

森 300年の伝統に恥じないよう、麦の選別、麹の選別、温度管理まで、とにかく丁寧に作業を行なっています。私は麹を作ることができないのですが、経験豊富な杜氏たちが真剣に向き合ってくれています。現在、蔵には3名の杜氏がおり、40歳の若い杜氏が中心となって酒造りに励んでいます。

しっかりと手をかけて、焼酎造りを行っている。

焼酎は、涼しくならないと仕込みができないのですが、最近は日本の夏が非常に高温なため、10月中旬ぐらいから仕込みに入っています。ただそれも年によって変わるので、気温を見ながら進めています。

―「吉兆安心院蔵」はどんなシーンで楽しんで欲しい焼酎ですか?

森 「吉兆安心院蔵」は、もともと焼酎が好き、という方に好まれるお酒で、香りも強いのでロックでちびちびと味わう方が多いようです。

オススメの飲み方はロック又は水割り。香ばしい香りがふわりと立ち上る。

―「安心院蔵」というお名前の焼酎は他にもあるのですね。

森 そうですね。4種類ほど製造しており、中でもメジャーなのが大麦を50%磨いて作った麦焼酎「高精白 安心院蔵」です。焼酎は一般的に30%ぐらいの磨きで製造するのですが、こちらは限界値とも言える50%まで麦を磨いており、日本酒で言えば大吟醸のような存在ですね。また「吉兆安心院蔵」が黒麹で仕込んだ麦焼酎なのに対し、「高精白 安心院蔵」は白麹で仕込んでおり、大麦の甘みはしっかり残しつつも雑味はなく、すっきりした味に仕上がっています。食中酒として楽しんでいただくほか、湯布院の高級ホテルなどではカクテルのベースとしても使っていただいています。

焼酎初心者ほか、万人におすすめしたい「高精白 安心院蔵」。

2024年6月には、フランスで行われた日本の伝統的な酒類コンクール「Kura Master」の麦部門で金賞をいただきました。今、全国には1,200社ほど焼酎の蔵元がありますが、「Kura Master」で選ばれたのはわずか7社。おかげさまで近年は、関東関西を中心に、年間40万本ぐらい出荷しています。

―今後の展望についても聞かせてください。

森 今、弊社では年間1,000本ほどしか作れない「竹乃宴」というリキュールも製造しています。竹のエキスが入った焼酎で、全国に1,200ある蔵元の中でもこのようなリキュールを作っているのは弊社だけではないでしょうか。

日本国内では孟宗竹(もうそうちく)がメジャーですが、孟宗竹からはエキスが出ません。一方、大分県は全国で最も真竹(またけ)が多い場所で、こちらからエキスが出ます。そこで弊社では、孟宗竹のような大きな真竹を切ってきて、炭状になるまでバーナーで炙り、それを原酒である麦焼酎に漬け込むのです。1年ほど経つと、まるでウイスキーのような美しい琥珀色のリキュールが仕上がります。

年に1,000本ほどの限定なので、ほとんどが予約で売れてしまいます。原料には大分県が独自に開発した大麦「トヨノホシ」を、酵母も大分県が独自に開発したカボス果汁から分離した「大分酵母」を使っており、“大分県らしい”原酒であることも人気の秘密かもしれません。度数は38度と結構強いのですが、お酒の好きな方にはたまらないようで「予約開始はまだなのか」というお問い合わせをよくいただいています。

また、「安心院蔵 古酒」というものもありまして、こちらも現在4、5000本ほどストックがありますが、こちらは麦と大麦、それからお米をブレンドした焼酎で、試飲会などで飲んでいただくと非常に好評です。このように、弊社ではさまざまな個性豊かな焼酎、リキュール、そして清酒を製造しておりますので、ぜひ一度、味わっていただけたら嬉しいですね。

リキュール「竹乃宴」と「安心院蔵 古酒」。

―黒麹のしっかりとした味わいの麦焼酎はもちろん、竹の風味が味わえる「竹乃宴」も、大分らしい商品で、非常に興味が湧きました。お話をありがとうございました!

「吉兆安心院蔵」(900ml)
価格:¥1,268(税込)
店名:縣屋酒造オンラインショップ
電話:097-844-2250(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL: https://shop.agataya.jp/products/detail/57
オンラインショップ: https://www.agataya.jp

「高精白 安心院蔵」(900ml)
価格:¥1,179(税込)
店名:縣屋酒造オンラインショップ
電話:097-844-2250(9:00~17:00 土日祝日除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://shop.agataya.jp/products/detail/55
オンラインショップ: https://www.agataya.jp
Instagram:https://www.instagram.com/agataya_shuzo

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

森栄司(縣屋酒造株式会社 代表取締役)
1950年2月、大分県生まれ。1970年に別府杉乃井ホテルへ入社し、2020年、杉乃井ホテル退社と同時に縣屋酒造株式会社に入社、代表取締役社長に就任。

<文・撮影/鹿田吏子 MC/田中香花 画像協力/縣屋酒造>

羽田甚商店

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