
羊肉と抜群の相性「梅に鶯 羊にスパイス」とってもおいしくてびっくり!
2025/03/12
今回編集長アッキ―こと坂口明子が気になったのは、羊肉を知り尽くした専門店オリジナルの羊料理専用スパイス。近年、アスリートやダイエッターに人気の食材として注目される羊肉ですが、70年近く前から羊肉にこだわり続ける老舗です。羊を求めて世界55か国を旅した4代目、有限会社羊肉のなみかた 代表取締役社長の行方進之介氏に、取材陣が伺いました。

有限会社羊肉のなみかた 代表取締役社長 行方進之介氏
-創業からの歩みをお聞かせください。
行方 1958年、山形県米沢市に羊毛と羊肉の店として創業。羊肉を食べる習慣がなかった米沢に羊文化を根付かせたのが、創業者である祖父でした。中学卒業と同時に羊肉の世界に入った伯父が2代目を継承。羊牧場を開き、自社飼育にも取り組みました。父が3代目を継ぎ、1994年に、オンラインストアを開設。当時はインターネットが民間に開放されたばかりで、日本初のインターネット肉屋だと思います。父は現在も羊職人として現役。羊肉のなみかたは、米沢市内に小売り店「なみかた羊肉店」と飲食店「めえちゃん食堂」をもち、こだわり抜いた羊肉とオリジナルの関連商品を扱っています。


羊肉文化に食肉のオンラインショップと、時代をリードし続けてきた。
オンラインストアでは羊に関する情報や選び方、料理法などが美しい写真とともに解説されている。
―行方社長ご入社までの経緯は?
行方 羊屋の長男として生まれ、自社で羊を育てていたこともあって、幼いころから、羊と触れ合ったり、食卓に羊肉料理が並んだりといった環境で育ちました。家業を継ぐつもりでしたから、高校を卒業後は調理師専門学校で学び、米沢牛の老舗での修業を経て、2014年に入社しました。
―羊を求めて世界中を旅されたとか。
行方 勉強はさておき、羊肉に関しては英才教育を受けていましたから(笑)、それなりに知っているつもりでいました。でも、入社後、羊について学びを深めていく中で、知った気になっているだけだと気づいたのです。
日本における羊肉料理の歴史ってとても浅いのですが、世界では1万年前までさかのぼることができます。日本では数えるほどしか知られていない品種も、世界には1000種類以上もあります。南極大陸を除くすべての大陸に羊が生息していて、種類はおろか、育つ環境、気候、風土、餌によって味が変わります。オーストラリアと日本の羊しか食べたことのない自分が、「モンゴルで食べた羊がおいしかったよ」とおっしゃるお客様に「うちの肉の方がおいしいですよ」とは言えない。世界中で羊の育つ環境を肌で感じて、羊肉の目利きを世界基準にまでアップグレードしたいと思ったのです。そうして決意した世界一周の旅でしたが、資金に余裕があったわけではなく、貯金を切り崩しながらの貧乏旅行でした。食費には惜しまずお金を使う一方、宿泊費は相部屋や車中泊、時には野宿をしながら節約をしました。




上からモンゴル、エジプト、スイス、フランス。地球をぐるりと、世界中の羊や飼育環境を学んできた。
-どのような旅でしたか?
行方 ワクチン接種の関係で、まずはタイを拠点にミャンマーやインド、ベトナムと近隣をめぐりました。すべてのワクチン接種が終わった後はオーストラリアの牧場に住み込んでいろいろ教わり、南アフリカ、ヨーロッパ、北米、南米、またオセアニアに戻って中央アジアを回って帰ってきました。この旅は半年ほどでしたが、その後も単発で何度か渡航し、トータルで55か国ほどになりました。

品種も違えば料理法も違う。飼育環境や風土に合わせた多彩な羊料理。
これはモンゴルの遊牧民が作る羊肉の塩煮込み「チャンサンマハ」を囲む宴会風景。

スコッチウイスキーをかけて食べる、羊の内臓を使ったスコットランドの伝統料理「ハギス」。

メキシコの羊肉タコス。テキーラの原料となるアガベの葉で羊肉を包み、地中で蒸し焼きにする古代マヤ文明の調理法を取り入れた羊肉料理。
-旅で多くの学びがあったと拝察しますが、特に印象深い思い出は?
行方 中央アジアのキルギスを訪れたとき、子どもたちが当たり前のように羊の屠畜を手伝う光景に衝撃を受けました。日本のように便利なスーパーや肉屋さんはなく、自分たちが食べる肉は市場で羊を買って、庭で屠畜するのです。命が食べ物に変わる瞬間に、子どもの頃から立ち会っているので、命の尊さや、それをいただく感謝の心が自然と育まれているのを感じました。

キルギスの羊市場。

羊の命をいただく感謝の念が自然と身についている。
自分自身も、食肉公社で屠畜されたものしか扱ったことがなかったので、羊、命、関わる人々への感謝と仕事への認識を新たにしました。実は、旅に出る前は、会社を継ぐ身としてコンプレックスがありました。祖父も伯父も、そして父も、何十年も羊肉と向き合ってきた実績やノウハウがあったのに対して、自分は、ただ羊肉屋に生まれただけの男。お客様の信頼を得られるだろうかと不安がありました。
実際のところ、入社してすぐに配属されたのが飲食部門で、「めぇちゃん食堂」の店長になりましたが、離れてしまった常連さんがいました。それまでは2代目が切り盛りしており、頑固おやじにほれ込んで通ってくださったお客様も多かったのです。
アフリカから南米まで世界中で羊肉文化や羊肉料理を学んだ経験は、羊肉の奥深さを実感するとともに、ある種、4代目としての自分の武器になったように感じています。

行方社長もキルギスで羊の屠畜や調理を体験。

キルギスで教わった羊の麺料理「ラグマン」。
-今回ご紹介するスパイスは旅で出会った料理がベースになっていますか?
行方 出発点は、私が羊肉とスパイスの組み合わせがとても好きだということです。日本で羊肉料理というとジンギスカンがメジャーですよね。世界で羊肉文化の発達した地域は、スパイスの使い方がとても上手なのです。この商品は、中国各地で食べたウイグル羊肉串をイメージしました。クミンの風味が最も強くて、パプリカ、唐辛子、八角、シナモン、花椒などのスパイスをミックスしています。焼いた羊肉にかけるだけ。見た目ほど辛くないので、多めにかけても大丈夫です。

クミンをはじめ、数種類のハーブを独自ブレンド。

中国の羊肉串をイメージ。
―完成までの道のりは?
行方 1年くらいかかったでしょうか。ハーブを加えてみようか、ヨーロッパや中東のエッセンスも入れてみようかなど、何度も試作を重ねて完成した自信作。焼いた羊肉にたっぷりまぶして召し上がりください。ジンギスカンのアクセントにも良いですし、じゃがいもと好相性なので、私はラムジャガにするもの気に入っています。



羊肉独特の香りと抜群の相性。まさに「松に鶴」……ではなくて「梅に鶯」の組み合わせ。
―オリジナル商品はほかにどんなものがありますか?
行方 第一弾は「羊屋謹製マスタード」(110g/¥750/税込)です。余計なものは極力入れず、白ワインビネガーで仕立てた粒マスタード。羊肉の風味とよく合ってとても好評ですが、手仕込みなので量産が難しい商品です。飲食部門のスタッフと一緒に開発した「ロックフォールマトンハンバーグ」(冷凍/150g/¥590/税込)もおすすめ。スパイスも合わせたこの3つが現在の主力です。
―今後の展望をお聞かせください。
行方 飲食店舗に関しては、人あっての商売だと思うので、無理に広げようとは思っていません。ただ、中華料理人の同級生が転職を考えているようなので、羊中華の店はどうかと思ったりはしています。
オリジナル商品については、このスパイスと一線を画す、シーズニングのようなタイプも開発して、広く羊肉を楽しんでいただけるフックにしたいと思っています。とにかく、うちの企業理念として、日本の羊肉文化の発展に貢献し続けたいというのがあるので、新しい羊肉の楽しみ方を提案していかなければと感じています。
オンラインストアでお求めいただける羊肉の品質向上にはとても力を入れています。専門店ならではの、希少部位や珍しい品種や部位も取り扱っています。生産者や生育環境の見える羊、加工過程の安全性、品質、味わい、どれにも自信があります。ぜひ、改めて羊肉の魅力を感じていただきたいと思っています。
-羊肉への深い愛情や命への責任を感じる素晴らしいお話を、ありがとうございました!

「羊屋謹製スパイス/梅に鶯、羊にスパイス」
価格:¥300(税込)
店名:なみかた羊肉店ONLINE STORE
電話:0120-355-229(10:00~19:00 月・火休み)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.umai.co.jp/nikuya/products/detail/1952
オンラインショップ:https://www.umai.co.jp/nikuya/
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
行方進之介(有限会社羊肉のなみかた 代表取締役社長)
1990年、山形県生まれ。なみかた羊肉店の長男として育ち、幼少期から羊肉に親しむ。高校卒業後は調理師専門学校で学び、米沢牛の老舗などで修業を積む。その後、世界の羊肉文化に触れ、羊肉の目利きを世界基準に高めるべく、バックパッカーとして世界一周を敢行。これまでに55カ国以上で羊肉文化を学ぶ。2013年になみかた羊肉店に入社し、2019年に代表取締役社長に就任。世界での経験を基に羊肉の品質を追求し続けている。
<文/植松由紀子 MC/田中香花 画像協力/羊肉のなみかた>