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山形の郷土料理「だし」を手軽に食卓へ。お茶の老舗・桑名園本店の社長が自ら商品開発した名品

2025/03/12

今回、編集長アッキーが見つけたのは、「山形県お土産コンテスト」で県知事賞にも輝いた名品。山形で昔から食されてきた郷土料理を手軽に全国の人が楽しめるようにしたフリーズドライ商品です。お茶の専門店である株式会社桑名園本店がなぜこの商品を開発したのか、目指している世界観まで、同社代表取締役の井上茂氏に取材陣が聞きました。

株式会社桑名園本店 代表取締役の井上茂氏

株式会社桑名園本店 代表取締役の井上茂氏

社長ご就任の経緯を教えてください

井上 桑名園本店は1887年(明治20年)の創業で、私で4代目になります。私はいずれ継ぐつもりではありましたが、東京の大学に通っていた4年生の時に父が病気で倒れ、思いがけず早く戻ることになりました。当時は学生運動終盤の頃で、卒論免除でなんとか卒業でき、卒業式の前日に父は他界しました。

本当はもっと父から学びたかったのですが、当時は癌告知をしないのが普通でしたし、「治ったら教えるから」と言われたままになってしまいました。全く商売のこともわからない若者でしたが、従業員の方のご協力もあって、少しづつ仕事を覚えて引き継いできました。

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1947年(昭和22年)頃の高畠旧店舗。

100年以上の歴史があるお茶の専門店ですね。

井上 私が30代の頃まではお茶の問屋でした。でも、卸の業態は規模の大きいところには敵わないですし、5年後、10年後を考えたら生き残れないのではと考えはじめ、自社商品の開発をはじめました。

山形にはおいしいものやいい食材がたくさんあります。素材に付加価値をプラスし商品化し、もっと全国に発信したいと考えていました。名産のお米「つや姫」を使ったお茶や、蕎麦茶の開発、また、さくらんぼやラ・フランスのフルーツケーキなどを商品化してきました。

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「フルーツケーキ 山形のさくらんぼ」。
国産小麦100%の生地に、さくらんぼのピューレを5%使用。

今回ご紹介いただいた「山形だしの素」について教えてください。

井上 これは、夏に各家庭で作る山形の郷土料理の「だし」です。うちでも、小さいころから母が夏野菜でよく作ってくれたものです。なす、みょうが、おくら、きゅうりを混ぜ合わせたシンプルな料理で、夏場の水分補給・体調を整えるためにも毎日のように食べていました。使う材料も各家庭で少しずつレシピが違います。

2016年にテレビの「ケンミンショー」で取り上げられ、全国に広まりました。しかし、市場に出回ったのは漬物で作っただしで、私たちが本来食べている「だし」とは違うものでした。せっかくなら地元で食べているものを全国の方に楽しんでもらいたいという思いで、この商品を開発しました。

2017年くらいから食材を探したり、母の味を引き継いだ妻と共に自宅で何度も作ってみたりして、商品化しました。

「山形だしの素」と手土産用の「山形ばあちゃんのだしの素」。

―どんなところが特徴なのでしょうか?

井上 特徴としては、素材がフリーズドライで1年間常温保存できるところです。これで全国にデリバリーできるようになりました。「山形のだし」というのは、夏野菜を4、5種類細かく刻んだものなのですが、実際つくると慣れた主婦の方でも4、50分はかかります。これがきゅうりを刻むだけで、だれでも簡単に5分で作れます。

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山形県鶴岡市産だだちゃ豆、北海道産昆布、みょうが、おくら、
青じそ、とうもろこしの乾燥食材とだししょうゆがセットになっている。
具材をぬるま湯で戻してから、刻んだきゅうりをあわせるだけで完成。

たくさんの賞にもノミネートされていますね?

井上 2020年には「山形県お土産コンテスト」で県知事賞という最高賞をいただきました。これで山形PRのお墨付きをいただけたと思います。また、2022年にはアメリカの山形県人会の懇親会で炊き立ての「つや姫」に乗せて懐かしいふるさとの味を楽しんでいただいたと聞いています。

―食べ方のおすすめは?

井上 個人的には、炊き立てのごはんの上にのせるのが一番のおすすめですが、夏は素麺や冷麦の薬味として、冷奴などにもピッタリです。味付けはしていないので、だしや醤油で自分流にカスタマイズすることもできます。商品にはだし醤油を添付していますから、お好みでかけてみてください。

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夏野菜と昆布のマッチングが絶妙。
野菜は食感がよく清涼感があり、とろりとした粘りがのどごしも良い。
だししょうゆをかければ、ごはんのおともにピッタリ。
そのままでもアレンジしてもおいしくいただける。

アンテナショップ「茶蔵-sakura-」についても教えてください。

井上 お茶業界は消費量が減っています。40代以下の方の家には急須もないということも多く、リーフでお茶を楽しむのは50代後半以上の方になっています。売上が下がることはわかっていたので、何か新しい事に取り組まなければならないという思いはずっとありました。

「井の中の蛙」、「されど大海を知る」これだと思い、月に1、2度は東京へ来て、行列の店や売れている商品、人気の飲食店などを回り、情報収集したり、妻と一緒に日本中いろんな旅しながら考えておりました。

そして、お茶のいろいろな楽しみ方を提案することをコンセプトに「茶蔵-sakura-」ブランドを立ち上げ、ショップと和カフェ・ギャラリーの3つの空間を兼ね備えた今までどこにもない複合店舗を2004年にオープンしました。

ショップは、日本茶をはじめお茶を使ったお菓子やスイーツ、生活を彩る器、素敵な和の暮らしを演出する和雑貨などを取り揃えたお店です。カフェでは、和モダンな空間の中でお茶や甘味・ランチを楽しみながら、ゆったりした心地よい時間をお過ごしいただけます。また日本茶のおいしさやお茶の楽しみ方、緑茶・抹茶にこだわった創作甘味なども提案しております。

ギャラリーは、落ち着いた和の佇まいのコミュニケーション空間で趣味の発表会・展示会・作品展・各種カルチャー教室など地域の皆様にご利用いただいております。

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「茶蔵 米沢店」。桑名園本店のプロデュースによる
ショップとカフェ、ギャラリーをかねそなえた今までにない新しい複合ショップ。

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ぼうじ茶パフェや抹茶パフェ、お茶のジェラートなど、
若い人から年配の方まで楽しめるカフェメニューが人気。

今後のビジョンをお聞かせください。

井上 山形にはいろいろないい素材があります。それを全国に発信して皆さんに知って楽しんでもらいたいですね。創業以来今年で135年お茶に携わっていますが「商い」を通して、お取引先やいろいろな人に支えられて、これまでやってくることができました。これまでお世話になったことに感謝し、次世代に向けたお茶の可能性と新たな取組みにチャレンジし、未来に向けて、100年残るものを目指していきたいと思います。

茶蔵は「汗が客を呼ぶ、味が客を呼ぶ、情けが客を呼ぶ、噂が客を呼ぶ、客が客を呼ぶ」そんな店にしたいと思います。

―ぜひ山形へ行った際には「茶蔵」で和カフェを楽しみたいと思います。本日は、貴重なお話をありがとうございました。

山形だしの素、山形ばあちゃんのだしの素

「山形だしの素」(3~4人前)
価格:¥500(税込)※送料別途
店名:茶蔵-さくら-
電話:0238-37-3330(9:00~16:00 土日祝・年末年始など休業日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sakura21.com/items/32865732
オンラインショップ:https://www.sakura21.com/

「山形ばあちゃんのだしの素」(3~4人前・2回分)
価格:¥1,000(税込)※送料別途
店名:茶蔵-さくら-
電話:0238-37-3330(9:00~16:00 土日祝・年末年始など休業日を除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.sakura21.com/items/32866192
オンラインショップ:https://www.sakura21.com/

※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。

<Guest’s profile>

井上茂(株式会社桑名園本店 代表取締役)
山形県出身。大学4年時に父の急病のため、4代目として家業を継ぐこととなる。お茶の問屋という業態を見直し、お茶とカフェ、器と雑貨、そしてギャラーを擁した新スタイルの複合ショップ「茶蔵(さくら)」をプロデュース。県内6ヶ所に展開し、おしゃれな店作りとおいしいメニューで観光客などからも好評を博す。「山形だしの素」の開発など、山形県の魅力を発信するため、日々奮闘中。

<文・撮影/尾崎真佐子 MC/藤井ちあき 画像協力/桑名園本店>

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