
バリ島生まれのミネラル豊富な塩を使用。辛さがあるからこそ甘さが一層引き立つ「ガトーショコラ『テオ』」
2025/04/18
今回、編集長アッキーのアンテナに架かったのは、「塩を振りかけていただく」というユニークなチョコレートケーキ「ガトーショコラ『テオ』」。こちらの商品を企画・販売する株式会社堀商代表取締役社長の堀太郎氏に、取材陣がお話を伺いました。

株式会社堀商代表取締役社長 堀 太郎氏
ーまずは御社の沿革について、お聞かせください。
堀 1948年に私の父が、ガラス食器やガラス瓶の卸問屋「堀硝子店」を創立し、1956年に「有限会社堀硝子店」を設立。翌年から岡山の百貨店「天満屋」さんとお取り引きさせていただくようになり、ガラス食器のほか陶磁器の取り扱いも始め、1972年に「株式会社堀商」と組織及び名称を変更し、現在に至ります。私は大学卒業後、見習いも兼ねてメーカーで1年ほど働いた後、堀商に入社。以来ずっと、百貨店や量販店の食器売り場に商品を納めていました。
ー1987年に社長に就任されてから15年経った2002年、新たに「MAORI」というブランドを立ち上げられました。それまでの経緯を教えてください。
堀 弊社は、百貨店や量販店に品物を納めるだけではなく人的な協力もする、つまり販売のお手伝いもする問屋でした。私は入社後、すぐに岡山高島屋さんの担当になり店頭に立つ日々。当時は好景気だったこともあって、昼休みも15分取れるか取れないかくらいの忙しさでした。そういう生活が十数年続いたでしょうか。それはそれでやりがいがあり、楽しかったのですが、次第に「このままでいいんだろうか?」と思い始めたのです。

シンプルなデザイン、上質な紙を使用したMAORIカタログ。
ー何か、きっかけがあったのですか?
堀 2000年に、結婚式場が主催する業者のツアーがありました。行き先はニュージーランド。私は妻と一緒に参加しました。
オークランドからフェリーに乗って、デボンポートという昔の雰囲気がそのまま残る港町に向かっていた時のこと。ふとデッキの方を見ると、女の子が2人、楽しそうに遊んでいました。彼女たちはブランドもののバッグを持っていたわけではなく、洋服も昨日着たものを今日も着ている、といった感じでした。
しかも、足元を見ると2人とも裸足。普段から靴を履いていないようで、船の中じゅうを裸足で歩いているのです。ニュージーランドの先住民族、マオリ族の子たちのようでした。着飾っているわけでも、メイクをしているわけでもないのに、なぜか彼女たちに引き寄せられ、心にグッと込み上げてくるものがありました。なぜ、こんなに感激しているんだろう。そう思ったとき、気がつきました。たぶん、彼女たちは守るものも背負うものも何もない。その屈託のなさに、心を打たれてしまったんです。
ーブランド名の「MAORI」は、その時のエピソードが元になっているのですね。
堀 そうです。私はその時、先代から50年余り続けてきた卸売業を「やめよう」と思いました。入社以来、仕事はそれなりに楽しいと思っていたのですが、考えてみれば、卸している商品に私の意思は一切入っていないんです。ただ、メーカーさんが持ってきたカタログから、百貨店さんや量販店さんが品物を選び、それを卸していました。
そのことに窮屈さを感じていながらも、売り上げも順調でしたし、社長として守るべき社員たちもいるので、従来通りの商売を続けていました。でも、やはり心の中はモヤモヤしていたんですね。それが、2人の女の子たちの姿を見たことで、改めて「自分が本当にやりたいこと」が明確になった。それで、方向転換を決意しました。これからは自分が本当にいいと思うものを販売しよう、販路も自分で広げていこうと。
そして2002年、オリジナル商品のブランド「MAORI」がスタートしました。

マオリ族の入れ墨文化にインスパイアされ、デザインに取り入れたロゴマーク。
ー周りの反応は、いかがでしたか?
堀 商売仲間たちには「自分が好きなことをやるのはいい。でも、せっかく百貨店との取り引きをしていて、確かな販路もあるのだから、それはそれで続ければいいのに」と言われました。でも、それでは意味がないんです。守るものも背負うものもない2人の女の子たちに感激して、自分もそうありたいと思ったわけですから。自由と、心からの楽しさを得るには、何もないところから始めなければいけない。社員にもそう伝えました。心の中では反発していた人もいたと思いますが、誰一人、辞める社員はいなかったんです。
ー「MAORI」のブランドコンセプトを教えてください。
堀 当初、ブライダルギフトとしてスタートし、「あなたは思い出の品をいくつ持っていますか」をテーマとしました。
当時、私はフランスに行った際に2万円で腕時計を買いました。高級品ではありませんでしたが、どこへ行くにもその時計をつけていたのです。なぜなら、その時計を見るたびに「フランスのあのお店で、店のおじさんと話をしたなあ」という楽しかった思い出がよみがえると共に、どこにでも売っているものでは無い希少性が思い出の品にふさわしかったからだと思います。
たとえば、結婚式の引き出物としていただいた商品と同じ物が、3000円で百貨店の売り場に並んでいたら、「あれは3000円の物なのね」と思うだけで、その人にとって思い出の品にはならないと思うんです。
私は、みなさんに「思い出の品」をお届けしたい。そのために、「年齢性別を問わず喜ばれる品をデザインし、手間ひまを惜しまない」、「人の手によって心を込めて創られた品を大切にする」、「自然素材を使う」、「時が経っても色あせず、味に深みが出てくる品を扱う」、「すべての商品は、直接作り手を訪問して依頼する」、「ハートを大切にしている、厳選された式場のみで取り扱っていただく」、「カタログ内すべての商品で組み合わせが自由に行える」という7つのことにこだわり、オリジナル商品の企画制作を進めていきました。
ー評判は、いかがでしたか。
堀 方向転換後、2年間は赤字だったのですが、おかげさまで、弊社の考えに賛同してくださる式場が徐々に増え、お客様からもご好評いただいて、売り上げは順調に伸びていきました。
ところが、その流れはコロナ禍で大きく変わりました。当時は、結婚式を挙げて披露宴もしたいのに、できなかった方が大勢いらっしゃいました。それによって人々の、結婚式や披露宴への意識が変わったのでしょう。弊社としても、ブライダルギフトだけではやっていけない。いくら自信を持っている質の高い商品でも、お客様にお届けできなければ意味がありません。自信を持っておすすめできる商品だからこそ、多くの方にお届けしたい。
そうした思いから、ブライダルギフトとしてはもちろん、それ以外のご用途としてもお買い求めいただけるよう、オンラインショップを立ち上げました。MAORIには、竹の器を揃えた「BAMBOOSERIES(バンブーシリーズ)」やオーガニックコットンのタオル、陶磁器などさまざまなシリーズがありますが、いずれも私が作り手の元を訪ね、フェイス・トゥ・フェイスで作り上げた自信作です。

自然素材である竹を何層にも重ね、圧縮して作ったボウルやプレートが揃う「BAMBOOSERIES」。
どんなインテリアにもしっくり馴染む。食器としてだけでなく小物入れや花器として使っても。

MAORIのタオルは、3年以上農薬や化学肥料を使っていない農地で有機栽培されたオーガニックコットンを使用。
赤ちゃんが口にしても大丈夫。今治製。
ー今回ご紹介させていただくのは、スイーツシリーズの「ガトーショコラ『テオ』」です。こちらの商品について、お聞かせください。
堀 世の中に、おいしいガトーショコラはたくさんあるでしょう。そうしたなか、弊社のガトーショコラの最大の特徴は、塩を振りかけて召し上がっていただくことです。「結婚というのは甘いだけではなく、辛さがあるからこそ甘さがより一層引き立つもの」というのがこの商品のコンセプトです。
塩は、バリ島東海岸・クサンバの海水を、昔ながらの揚げ浜方式(汲み上げた海水を砂浜の塩田に何度も何度もまき、太陽と風の力で蒸発させる)で作ったもの。クサンバ海岸の砂浜は、現地で「神の山」と崇められているアグン山が背後にある影響なのか、ミネラルをたっぷり含んだ黒い砂浜です。
日本でも同じ方式で塩を作っているところはありますが、多くの場合、釜を炊いて水分を蒸発させて塩にします。でも、60度を超えるとミネラル分が減ってしまうのだそうです。その点、この塩は火を加えていないので、たっぷりのミネラルがそのまま残っている。だから、体にいいですし、味もただ塩辛いだけでなく深みがあります。

MR-180「ガトーショコラ『テオ』」。桐箱入(9×17.5×h5cm)、賞味期限90日。¥1,404(税込)

バリ島生まれの、ミネラルをたっぷり含んだ結晶塩「MAORI SALT」。口に含むと、塩辛いだけでなく甘みが感じられる。
ー塩田にも、行かれたのですか?
堀 もちろんです。クサンバの砂浜に行くと、一人で海水をすくって登ってくる男性と出会いました。肩で天秤棒をかついで海水を運ぶので、肩にタコが出来てシャツが破れていました。彼が身を粉にしてつくった塩のうち、その上澄みの結晶のみをすくい取り、藻などの不純物をピンセットでていねいに取り除いたものが、このガトーショコラに添えた塩、MAORI SALTです。

海水を汲んで急勾配を登り砂浜にまく。かなりの重労働だ。

ピンセットを使い、手間ひまかけて不純物を取り除く。
ー「テオ」という名前の由来は?
堀 想像してみて下さい。晩秋のニューヨーク。高層マンションの1室、ベランダに出てみると、細かな雪がはらはらと褐色の大地に舞い降りる。暖炉の温かい明かりだけの薄暗いリビングではジャズがマイルス・デイビスの『Teo』が流れているそんなほっとする時間を……そんな想いを込めました。

甘いだけでない大人の味。アールグレイとよく合う。
ー木箱入り、というのもユニークですね。
堀 「あなたは思い出の品をいくつ持っていますか」。品物は思い出の品として残りますが、お菓子は食べてしまうと遠い記憶の彼方に行ってしまいます。少しでも思い出が残ればと木箱にしました。メガネやアクセサリーを入れてもよし、お食い初めのスプーンを入れてもよし。その方なりの用途で、長く使っていただけたらうれしいです。

ーほかに、「Be happy」というパウンドケーキのセットも人気だとうかがいました。
堀 今年1月に販売を始めた、「生きて、愛して、笑って、幸せになる」がコンセプトの、スクエアパウンドケーキ3種の詰め合わせです。「生きて」=チョコレート(大地)、「愛して」=ラズベリー(愛を表す色)、「笑って」=オレンジ(明るさを表す色)としました。こちらも木箱入りです。

「スクエアパウンドケーキ『Be happy』。
左から「Live」=チョコレート、「Love」=ラズベリー、「Laugh」=オレンジ。
桐箱入り。¥1,080(税込)
ー「テオ」も「Be happy」も、イメージをとても大切にされていますね。
堀 うまく説明できないのですが……想像する部分があったほうが深みがあるような気がするんです。パッと見てわかりやすい物もいいと思うのですが、たとえばシルエットを見た時に想像が膨らむような物って、なんだか素敵じゃありません?もちろん、私は商品に思いを込めていますが、それを押し付けるのではなく、手に取った方が自分なりに思いをめぐらして味わったり、使ったりしていただけるような商品を、これからも作っていきたいと思っています。
ー今後の展望をお聞かせください。
堀 いい商品を生み出すためにも利益を出していかなければいけませんが、会社を大きくしたいとは全然思っていません。儲けようとすると、さまざまなものを背負うことになります。それは、MAORIのコンセプトとは正反対。何も背負わない身軽な状態を維持することが会社にとっても私自身にとっても非常に重要で、ひいてはそれが、お客様の思い出につながる商品作りにつながるはずです。これからも、余計な物は持たず、まるで裸足で歩いているような自由さを忘れずに、物作りに励んでいきたいと思います。
ー素敵なお話を、ありがとうございました。

「ガトーショコラ『テオ』」
価格:¥1,404(税込)
店名:MAORIオンラインショップ
電話:086-264-2525(9:00~18:00 土日祝除く)
定休日:インターネットでのご注文は24時間365日受付
商品URL:https://www.horisho.net/SHOP/MR-156.html
オンラインショップ:https://www.horisho.net/index.html
※紹介した商品・店舗情報はすべて、WEB掲載時の情報です。
変更もしくは販売が終了していることもあります。
<Guest’s profile>
堀 太郎(株式会社堀商 代表取締役社長)
1952年、岡山県生まれ。大学卒業後、1年間のメーカー勤務を経て1976年、株式会堀商入社。1987年、同社代表取締役社長に就任。
<文/鈴木裕子 MC/藤井ちあき 画像協力/堀商>