手間ひまを惜しまず努力を重ね一品一品に愛情を込めて生み出された味。
伝統に裏打ちされたもの、初代として創意工夫されたもの。
そこに共通するのは、何ものにも動じず何ものにも屈しない、極めることへの強いこだわりです。
「匠」のわざが光る逸品7種。じっくり堪能してください。
【特集】「匠」のわざ、こだわりの逸品
繊細な口どけをもたらす丁寧な手作業に脱帽
炊きたてのご飯にかけてひと口味わうと、ふわっととろけて、瞬時に広がるカツオのうま味。この感覚は、まさに初めての体験。これが、2缶で1万円と高額ながらも、愛用者を増やし続けているうわさのふりかけ。そのおいしさの理由は、原料と作り方にあります。
かつお節の最高級品「本枯節」と、厳選された天然素材だけで作られた秘伝のたれが鍵。本来なら、刺身やたたきで食べられる新鮮な近海のカツオを使い、5か月かけて作られる本枯節は、それ自体が幻の希少品。そして、独特のとろける口どけを生むのは、0.01ミリという驚きの薄さのカツオ花を削る熟練の技があればこそ。繊細さを生かしたまま、手作業で素早く味付けして仕上げる。この連続技で、極上の味わいが誕生するのです。
最大の特徴である"口どけ"を実現するのが、0.01ミリ以下という削り花の薄さ。この薄さに削るため、削り機の円盤に付いているカンナ刃を1時間に1回、ベテランの勘と技で調整する。
一度に味付けする量は、カツオ節33g分だけ。しょうゆ、みりん、国産はちみつを混ぜた秘伝のタレを、2回に分けて手早く混ぜ合わせる。次に、砂糖・塩・厳選のしょうがをふって味付け。
味付けしたかつお節は、オーブンで38分加熱し、取り出したらふりかけの大きさを揃える。素早く袋に詰め、風味を閉じ込める。ここまで約1時間の工程で、1回に作られる量はわずか14缶分のみ。
◆匠のわざ
見原 賢さん
田尻工場の工場長。削りの達人。削り機の円盤には14枚のカンナ刃が付いていて、そのすべてが同じ厚みに削れるように調整するのが、腕の見せどころ。「約1時間おきに、慎重に丁寧に歯を調整しないといけないんです」とのこと。
◆匠のわざ
齊藤 義勝さん
「一枚一枚の削り花が、タレに絡みつかないよう、数回に分けてやさしく吹き付けます」と言うベテランの齊藤さん。それをゆっくり乾燥させて、再度味付け。これをひたすら手作業で繰り返す。秘伝のタレを扱う味付けの達人。
東京豊島区の鬼子母神前。安産・子育ての神が見守る落ち着いた雰囲気の中で、四季折々の食材を使った会席料理が気軽に楽しめると人気の店、割烹大倉。その大倉が、長い年月をかけて作り上げたのがこの江戸粕漬です。
長年の研究で生み出された絶妙な加減で配合された酒粕。そこに、割烹料理店ならではの仕入れによる新鮮な魚介類が漬けられています。注文を受けてから酒粕に浸け込むので、手元に届く時点では浅漬けの状態。冷蔵庫で数日寝かせることで、自分の好みの漬け加減で味わえるのも楽しみのひとつ。
セット内容以外にも、鰆やタラコなど21種の食材から詰め合わせも可能。
昭和27年創業の醸造メーカーが生み出した「味の母」。和食作りに欠かせない日本酒とみりん、その2つの効果を併せ持った醗酵調味料です。
日本酒造りと同じく「もろみ」を醸成したあと、米、米麹、塩を加えて糖化させ、12か月をかけてじっくりと熟成。でき上がった黄金の液体は、醸造によるアミノ酸のうま味を料理に加えてくれるうえ、日本酒のように素材の臭みを取り、味を浸透させ、みりんのように甘味を加え、煮くずれを防止し、ツヤを出してくれます。
一度味わってファンになり、リピート注文をする人が多いとか。知る人ぞ知るまさに「隠し味」になる一本です。
地元の人々から「おみちょ」と呼ばれ親しまれている近江町市場。江戸時代から続く歴史ある市場で、古来より金沢の人々の食文化を支えてきました。
そんな金沢の食文化の代表と言えるものが押し鮨。祭りや婚礼といった「ハレ」の日のご馳走として親しまれており、豊作や海の安全祈願のため神様に供えたお米のお下がりを、塩をした魚と共に箱に入れて、皆でわけあって食べたことがその風習の起源と考えられています。
近江町市場仕込みの素材を使い、手間をかけて作られた棒鮨は、魚と米がお互いの味を引き立て合い、口にすれば五感で幸せな「ハレ」を感じます。
江戸時代の会津若松で、絹織物や雑穀の販売店として創業した平出油屋。採油を生業とし始めたのは明治時代からで、現在もなお伝統的な技術で採油を行っている老舗のひとつです。
平出油屋が行うのは、江戸時代の技術の流れを汲んだ伝統手法「玉締め圧搾法」。溶剤を使用して化学的に処理する現代の採油方法と比べれば効率は悪いけれど、石臼の重みでじっくりと時間をかけて搾り出された黄金色の油は、とろっとした質感で実に風味豊か。
明治時代から人々に愛され続けてきた本物の油は、手にする人の食卓を味わい深いものにしてくれるでしょう。
今を遡ること30年余。「安く大量に」という加工品が主流の時代に、山形の老舗精肉店オーナーが願ったことは、「地元の高品質な肉を使い、うまいハムを提供したい」という想いでした。
精肉として食される上級品質の山形産豚肉を使用し、乾燥や燻の工程では、薫りがチップよりも豊かに移るというソメイヨシノの原木を使用。惜しみない手間をかけているため夏と冬にだけ作られる限定品であり、全国のファンからは「幻のハム」と呼ばれています。
日本人の嗜好に合うよう、試行錯誤を重ねて作られているためしょうゆとも好相性。肉の弾力とうま味、そして薫りを楽しみながら味わいたいもの。
明治8年に県庁内に植えられた3本の苗木から始まった青森のりんご栽培。現在のように栽培が盛んになったのは、涼しい気候や広い土地など単に風土が適していたのみならず、りんご作りに尽力した人々の努力の成果です。
そんな、およそ140年に及ぶりんご農家の思いが詰まったのがこのジュース。未成熟や落果したものは使わず、すべて樹上で完熟したりんごだけを使用。酸化防止剤はもちろん、砂糖や水も使わずにそのまま絞ったという、まさに真の意味でのジュースなのです。
蓋を開ければ漂う完熟りんごの芳醇な香りに、りんごに懸ける人々の想いを感じながらじっくり味わいたい逸品。