第4回 株式会社くらこんホールディングス 社長 伝宝 啓史さん

昆布を家庭の身近な食品にするため、
消費者に寄り添う地道な努力を重ねる

 

上着を肩にいかめしい顔つきのサラリーマンがプリントされたパッケージは、一度見たら忘れられません。顔に似合わず、Facebookでは自らおやじギャグをとばす「塩こん部長」で有名な株式会社くらこんホールディングスの社長・伝宝啓史(でんぽう けいじ)さんにお話をうかがいました。

 

――― まずは、イチオシの「わさび昆布」の紹介とおすすめの理由を教えてください。

伝宝 啓史社長(以下、伝宝):わさび昆布は今まで一般には流通されていなくて工場直売だけの限定品でしたが、今回、通信販売で販売することにしました。
ご存知のように食べ物は作りたてが一番美味しいのですが、流通させている商品はお客様の口に届くまでに時間がかかるので、日持ちをさせるために濃い味にしたり、少し塩分を多くしたりします。ご紹介する佃煮も通常、味を濃く、じっくり炊いて日持ちをさせます。そうしますと、ご飯と一緒に食べないといけないとか、何かと一緒に食べなければいけません。

素材そのものの味を感じていただきたいと思っていても、日持ちしないので薄い味付けにして美味しく炊いたものを提供することは難しいのです。ですが、試行錯誤のうえ、できたての佃煮をすぐに冷凍保存させることで全国へ流通させることが出来るようになったのです。
この商品は、わさびを使用しているのですが、わさびと昆布って非常に相性が良いのです。ただ、わさびもなかなか曲者で、風味がすぐに飛んでしまうんですが、こちらも冷凍で風味を閉じ込めました。他には3種類のわさびをブレンドする工夫もしています。それでもやっぱり飛んでしまうので、解凍したらすぐ食べていただくのが一番です。

 

――― 一番おいしい食べ方は、そのまますぐ食べるということなんでしょうか?

伝宝:そのまま食べてももちろんおいしいですし、ご飯と一緒に食べるのもおいしいですよ。今までの佃煮ですと、味が濃くて単品では食べにくかったかもしれませんが、この商品ならお酒の肴にしても良いと思います。私はそのままパッと食べてしまいますね。

 

――― こちらの商品を作るきっかけを教えて頂けますか?

伝宝:わさびが好きだからです(笑)。先程お話ししたように、わさびは昆布と非常に相性が良くて、佃煮屋さんは皆さんこの組み合わせが美味しいということをわかっています。ですが、わさびの風味が飛ぶので、なかなか手を出せないのだと思います。

 

――― 貴社は塩こん部長に始まるブランド戦略が特徴的だと感じていますが、このPR活動を始めた経緯は?

伝宝:昆布というのは非常に地味でして、スーパーマーケットの華やかな通路が沢山ある中、ひときわ地味な通路を探すと、昆布があるという状況です。しかし、それではいけないと。昆布は和食に根付いた“だし”からもわかるように非常に素晴らしい食材です。健康にも良い食品ということは理解されているはずですが、どうしても食の洋風化や簡便化が進んでいる中で、なかなか食べられていませんでした。

10年、20年前になりますけど、昆布というのはお年をめした方の食べ物でしたが、それでは我々の将来はないと考えました。昆布は本当に体に良いものであるという事は皆さんわかっているので、これをなんとしてでも食べてもらいたい、と思ったのが出発点でした。
そして、良いものだから食べてください、食べられるでしょ、という押し付けではなく、我々自身が変わらなければいけないと思ったのです。

 

――― 具体的にどのようなことをされているのでしょうか?

伝宝:塩こん部長は代表的なブランドとしてCMやLineスタンプなど様々な展開をさせています。それと合わせて行っている事が塩こんぶのレシピ提案です。塩こんぶは、過去はお茶漬けかご飯と一緒に食べるといった方法くらいでしたが、和風スパゲッティだったりチャーハンだったり、色んな食材に使える万能な調味料なのだと、しっかりとアピールすることを考えました。シーズンごとに代表的なレシピをホームページに載せ、それに合わせてテレビCMなんかもさせていただいています。
掲載されるレシピは毎シーズン1つなのですが、その背景には100種類ぐらいの候補があります。それをすべて自作し試食し、100レシピあれば99レシピがボツになります。本当に選りすぐりのおいしいレシピを紹介していますよ。お客様からも「これが美味しかったです」「これ本当に簡単だったよ」といったお声をいただいていますので、塩こん部長のキャッチーな部分と併せて、地道な努力があってお客様の心にもちゃんと刺さっていっているのかなと思っています。

 

――― そういったブランド戦略について、若い方からの反応はどうですか?

伝宝:明らかに昔はご年配の方だけだったのが、今では若い方々にも食べていただいているというような状況です。全ての年代の方に楽しんで料理に使ってもらうことで、少し大げさな話ですけれども、日本の食文化を守っていければとも思っています。

 

――― これまでつくってきたなかで、とくに思い入れのある商品はありますか?

 

伝宝:先程の塩こんぶのときにお話ししたように、“我々が変わらなければ”という思いが根幹にあります。当社は昆布、海藻、乾物を扱っていますが、海藻や乾物は昔からあり、食べ方にも古くからの固定観念があります。そこをまず変えようと考え、最初に当社のブレイクスルーのきっかけになった商品「満点おかず」の食べ方を提案しました。それは昆布の煮物や切り干し大根など昔からある料理に、お肉を加えるだけで劇的にお子さんの好きな味に変わる画期的なレシピです。
しかし、社内では結構大きな抵抗がありまして、昔からいる人は「こんなの絶対だめだ」と反対しましたが、当時は新人だった私も含めて若い社員たちで、上司や役員を説得しました。結果、「満点おかず」は当社にとってこの方向性で転換していくべきだなと思えた大きなきっかけになりました。

 

――― 最後にこれからの展開を教えてください。

伝宝:いかに今の時代に合わせていくかが大切なポイントだと思います。おいしいから買ってくれるだろうではなくて、どんどん変化していくお客様にしっかり合わせていく。お客様は世界中の色んなものを食べて舌も肥えてきていますし、本当においしいものの価値観も変わってきています。
また、当たり前の事ではありますが、おいしいものにはお金を出しますし、おいしくないものは食べたくないと思いますので、このおいしさというところをしっかり追求していきたいなと思います。そのために我々が変わっていくということは必要だと考えています。

伝宝 啓史さん
2004年10月に現職に就任。

株式会社くらこんホールディングス
https://www.kurakon.jp/index.html

1921年昆布問屋として創業。
1960年に手がけた初の加工品「をぐらや巻」がヒット。
くらこんブランドは、「びっくらこん!」や「こんぶのくらこん」、「塩こん部長」等のフレーズにて親しまれている。

OFFICIAL SNS

Instagramでハッシュタグ#お取り寄せ手帖を検索。

  • Instagram
  • Facebook
  • Twitter