お店で味わう香り高く新鮮なだしの風味を
簡単に家庭で再現できる調味料
業務用に調味料を専門に製造してきたアイン食品。多くの名店の味を再現してきたなかで、お店の香り高いだしを家庭でも簡単に味わえる商品を開発。その商品への思い入れや、企業では数少ない社会人サッカー部を保有している理由を社長の松岡和彦さんにお聞きしました。
――― たくさんの業務用調味料を製造する貴社が、おすすめするのはどのような商品ですか?
松岡社長(以下、松岡):弊社はもともと和風のだしから始まったメーカーで、今はだいたい商品が1400~1500点あります。
いろいろ広がったのですが、原点は何かと考えた時にだしではないかと思い、約10年に「味生庵」という家庭向けのだし調味料を新ブランドとして立ち上げました。
それをブランドとして広げていこうと考え、現在5種類展開させてもらっています。それが会社としての主力商品になります。
――― 製造方法ではどういったところがこだわりですか?
松岡:主な原材料のカツオや昆布は産地にこだわっていますし、製造方法もこだわっています。名店ではだしは必ず材料から取っていますので、そのだしの取り方を工場で“炊き出し”という方法で再現しています。ずっと炊き出していると、あくも出るし、苦味も出てしまいますので、弊社では、自然落下方式という方法を使っています。こし袋に入れた原材料をある一定の時間が経過すると空中に上げ、こし袋からポタポタポタとだしを自然に落下させます。
この方法は、手間がかかる上に、大量生産出来ません。しかし、自然落下方式で作っただしとそうでないだしとでは、やはり味や風味が違います。同時に食べ比べてみると、違いはかなりわかりやすいと思います。
――― 貴社のどのような点が依頼業者に選ばれていると思いますか。
松岡:約1,500種類あるといいましても、弊社の場合は、9割近くがOEM商品です。開発するにあたり、依頼をいただいた会社様からレシピを頂く場合は非常に作りやすいのですが、中にはレシピが無いところもあります。
例えば、“どこどこの有名店のポン酢と同じような味をこれくらいの値段で作ってくれないか”といったご要望が多いんですね。それに関して、再現する精度の高さとスピードの速さ、この2つを評価頂いております。
時間が無い中でいかにやるかがレベルアップに繋がることだと思います。依頼くださったお客様を第一に考えて、精度とスピードを両立出来るように日々努力しています。
――― 貴社の強みもお聞きしたところで、社長の“強み”もおうかがいしてもよろしいでしょうか?
松岡:私は大学卒業して、特に修行とか出ずにそのままうちの会社に入社したんです。社内では色んな部署を転々と経験させて頂きました。ほかの新入社員と同様に工場の下働きもやりました。袋詰から箱詰め、充填作業まで。
――― 本当に全てですね。
松岡:そうですね。年月が経ちまして、工場の中の設備やフローはガラッと変わりましたけど、やっている仕事の内容はそんなに変わりはないので、工場に入らなくてもだいたいわかりますよ。
――― その経験はどのような事に活きると思われますか。
松岡:例えば、工場の中で働いている人たちの考え方や思い、時には愚痴も、聞かなくても概ね想像できます。私自身がそうでしたから。「なんでこんな仕事してるのかな」とか「なんでこんな場所で毎日こんなことしてるのかな」とか。そう思い悩むことが私にもありましたので。その経験は、経営者として彼らのモチベーションを上げるためにやるべきこと、知らないこと、気づかないことをどう提供してあげるのかということを考える軸にはなっていると思います。
――― 貴社のサイトから、組織や仲間についての話を多くされていると感じました。
松岡:弊社にはサッカー部があります。私自身も小学校からやってきました。会社は集団でやっている組織だと思うんです。一人じゃ絶対出来ないわけですから、チームワークの本質的な部分はサッカーもビジネスも一緒なのです。
そういう意味では、弊社には、サッカー部OBの社員が多くいますのでサッカーに例えて話しますと非常に話しやすいですね。
――― 団体スポーツに共通するチームワークが貴社の中にも根付いているという事でしょうか?
松岡:チームワークってね、サッカーもビジネスもそうなんですけど、隣の人を好きになれっていう意味ではないんですね。いかに自分に与えられたタスクを責任もってやりきるかというところだと思います。
――― サッカー部の今後のビジョンは、どうお考えですか?
松岡:昨今、人材不足がよく話題に出ていると思いますが、そこを補う目的の一つとして、女子のサッカー部を立ち上げる予定です。
女子の日本代表がワールドカップで優勝したり、オリンピックでメダルを取ったり、ちょっとブームになった影響で、小中学生あたりの裾野は広がりましたが、高校生、大学生、社会人では受け皿がそんなに増えていません。サッカーを続けたくても自宅と職場と練習環境とこの3つのバランスが整っていないとなかなかできないと思うんですね。
男子サッカー部のノウハウを活用すれば、人を集められると思いますし、この活動を他の企業さんが真似してくれれば、女性の社会人のサッカー人口も減らないと思います。これが日本の企業スポーツへの貢献にも繋がるんじゃないんでしょうか。
――― 最後に、今後の展開をおうかがいします。
松岡:創業からやってきたお客様第一の在り方をもう一度見つめ直し、その在り方に沿ったやり方にするのが改革のひとつだと思います。
また、3年前から上海の方に合弁会社を設立しておりまして、次は東南アジアに進出したいなと思っています。
――― 中国から東南アジアへと拡大する理由とは?
松岡:向こうで製造して向こうで販売するのが主な目的ですので、中国という国の文化に沿ったものを主に生産しています。例えば生姜焼きのタレなどは受け入れられやすいです。
東南アジアでは日本食が4~5年前からブームになっていて、日本の外食産業がどんどん進出しています。おつきあいのある会社からは、そういう面で逆に食材を確保するのが難しく、かつ、クオリティーを保つのに難しくなっている、と聞いています。
食材をいかに美味しくするのかが調味料の役割ですので、私共のあり方は外食産業さんが海外でも伸びていくために、どういう手伝いができるかを考えています。
■松岡さんのおすすめ
北海道の銘菓わかさいも本舗の「わかさいも」
http://www.wakasaimo.com/
「北海道の室蘭という地域に昔住んでいた時があるのですが、最近その地域に住んでいる友達がお土産でくれたんです。20年以上経つんですけど、変わらずのおいしさでしたね。ちょっと大人向けの味わいに仕上がっています」