九州から発信する「おいしい」、「オシャレ」、「雑穀」の健康食
雑穀の地味なイメージを払拭し、女性向けのオシャレな商品展開を進める老舗雑穀メーカー、株式会社種商の代表取締役諸冨和馬さん。雑穀+αでおいしいと健康を全国に届ける諸冨さんに話をうかがいました。
雑穀の地味なイメージを払拭し、女性向けのオシャレな商品展開を進める老舗雑穀メーカー、株式会社種商の代表取締役諸冨和馬さん。雑穀+αでおいしいと健康を全国に届ける諸冨さんに話をうかがいました。
―― 貴社の成り立ちを教えてください。最初から雑穀がメインの商品だったのですか?
諸冨和馬さん(以下、諸冨さん):弊社が創業したのはちょうど戦後の食糧難の時期でした。人々のお腹をいっぱいにしたいけれど、米が足りない。そんな中で、創業者が米以外にも雑穀や豆類、卵を産地から集荷して、久留米市で卸売りを始めたのが最初です。当時は、米の代わりとして雑穀がよく食べられました。
その後、穀物の中で米の販売が伸びましたので、米を中心とした穀物メーカーに変わって行き、昭和40~50年頃に米やパスタなど白い穀物の文化が広がり生活習慣病が増たことで、平成に入り、健康ブームで再度雑穀が支持されるようになりました。そこで、弊社としましても、穀物の特性を生かしたブレンドやレシピを考案するなど、昔から食べられてきた様々な栄養成分のある天然の穀物を食べようということを提案してきました。
―― 雑穀をメインに扱うようになったのは、諸冨社長の代からとのことですが、シフトした経緯を教えてください。
諸冨さん:元々、雑穀はメイン商品でした。当社が扱う商品は、米、豆、雑穀に大きく分けられるのですが、最初に雑穀の取扱量が大きくなり、次に豆、その次に米が大きくなりました。昔は豆を炊く文化が日本にありましたが、段々と家庭で豆を炊かなくなり、消費量が減りました。その次に伸びてきたお米もまた人口減少や麺類やパンとのパイのとりあいになったことで、雑穀を主軸にして健康メインの商品を開発するようになりました。
―― 最初から女性をターゲットにしていたのでしょうか。
諸冨さん:平成に入って、誰が家庭の決済権を握っているかと言えば、女性なので、女性に好まれるように「きれいになりたい」「若くなりたい」「ダイエットしたい」「美肌になりたい」という要素を持った商品を開発した方がおもしろいのではないかと考えて、女性ターゲットへとシフトしました。雑穀はご飯と一緒に炊飯しなくてはいけないので、その手間を苦に思うことなくできるのは50歳以上の世代が多かったですね。
―― より若い年齢層をターゲットにするにあたり、どのような点を工夫したのでしょうか?
諸冨さん:年齢が下がるとお惣菜をコンビニ、スーパー、百貨店で買って家で食べることが多い。そうすると、ご飯が必要になります。それで、すぐ食べられるご飯の商品をとの要望があったので、5年前に冷凍米飯工場を建設しました。
ご飯の商品をどう売るか…、九州の工場では東京へ流通させるまでに生の商品は悪くなってしまいます。ですが、冷凍なら東京でも世界中でも同じ品質で食べてもらえます。冷凍も一番良い品質を保てるようにプロトン凍結技術を採用して、どこでもおいしいクオリティで食べられるようにしました。
―― 外食のお店にも商品を卸しているとのことですが?
諸冨さん:店舗さんや家庭も含めて炊くという作業は苦労と人件費と場所をとります。また、米は一釜に一味しかできません。それに対して、当社ではいろんな商品を生産できるので、アソートでいろんな味を一度に楽しめるのが良いという評価を受けています。今は見た目が可愛いか、インスタ映えしないと売れません。我々はそこに健康という要素を加え、おシャレで健康になる商品をコンセプトに作っています。
―― 見た目だけではないんですね。
諸冨さん:おいしくて体に良いが当社の商品の基本です。
―― 種商さんの穀物メーカーとしての一番の強み、特徴は何でしょうか。
諸冨さん:当社の穀物の取扱種類は日本一です。レアで当社にしかないという穀物がたくさんあります。雑穀を扱うようになって、新しい穀物がないかといった問い合わせや提案をされることがあり、何でも取り扱うようになりました。
―― 種商さんが多くの種類を扱えるのはなぜなのでしょう?
諸冨さん:生産者とのパイプがあるのが大きな理由です。北海道から沖縄まで日本中に生産者とのパイプがあります。生産者との繋がりや原料の仕入れの部分はすごく時間がかかります。生産者に普通にこの穀物を買うから作って欲しいと言っても作ってもらえません。生産者も生活がかかっているので、1年や2年でやめられては困ります。何年も長く作れないと、はい、作りますということにはならないので、やっぱり信頼関係ですね。何年も生産者から責任をもって買い取るという実績が必要です。
―― 種商さんはハラール認証もとっていますよね。これはなぜ取得されたのですか?
諸冨さん:ハラール認証は2014年に日本の穀物メーカーで当社が初めて取ったのですが、当時、2020年のオリンピック開催地が決まるかどうかという時でした。東南アジアでは、インドネシア、マレーシアがイスラムの宗教の国で、訪日観光客も多かったのですが、日本でハラール食を扱っている外食さんがほとんどありませんでした。オリンピックの合宿など1年前、2年前から調査に来られるので、先駆けて始めることが日本のためもなるだろうと思い、ハラールを始めました。また、ハラール以外にも、モンドセレクションは8年前から応募してずっと金賞をいただいています。
―― 種商さんの商品の中でも、とくにおすすめの商品を教えてください。
諸冨さん:おすすめしたい商品はいくつもありますが、『スーパーフードライスボール』はそのうちの1つです。
―― この商品を作ろうと思った経緯は何だったのでしょうか?
諸冨さん:スーパーフードは一時期ハリウッドセレブの中で流行したのですが、日本人はどうしても1キロの大袋を消費しきれず、また、使い方がよくわからないという声があがっていました。それならいろんなスーパーフードを使って、食べきりサイズのおシャレで可愛い食品を作ろうと思い、開発しました。
―― 商品の特徴は何ですか?
諸冨さん:スーパーフードは、ドリンクやサプリメント商品が多い中で、当社はおいしく食べられるというのをコンセプトに、食品として提供しています。サプリメント系の商品の原料はどうしても味がおいしくない。それをどのように他の味とミックスしたらおいしくなるか試行錯誤しました。
また、このまん丸の形も特徴の1つです。おにぎりは通常円柱や三角柱の形が多いですが、
当社の丸の形のライスボールは、全方向から押さえないとあの形にならないので、量産できるのは当社だけです。
―― パッケージも中身がおにぎりとは思えないですよね。
諸冨さん:社内の女性社員の感性をフルに使って、女性が好むデザインにしました。スイーツ、特にオシャレなケーキをイメージしています。ケーキってあんな感じの箱がマス目上に仕切られていて、いろんな味があり、宝石箱のようじゃないですか。そんな感じにしたいと思いました。
―― 最後に、昨今、雑穀が若い方々にも健康食として身近になっていく中で、どのような価値を提供したいとお考えですか?
諸冨さん:外食レストラン関係に関して言いますと、若い女性も、それ以外の方も、時には自分へのご褒美として外食して美味しいものを食べたいと思っている一方で、少しでも体に良いものや低カロリーのものと考えています。外食産業の方は自分の企業価値を高めたい、来店客数を増やしたいと考え、ファストフード店でも健康メニューを出すところが増えています。当社では、ただ商品を卸すだけではなく、雑穀を使った健康メニューを提案しています。お客様にリピートして頂くには安心、喜び、感動を感じて頂くことが不可欠です。そのための健康メニューをご提案しています。
雑穀は何百種類とあるので、見た目と味と食感と栄養成分の組み合わせは無限にあります。どんなに栄養豊富でも、味が大切なのは変わりません。おいしさと見た目をキープしつつ、栄養成分や香りなどその他の要素を決めるのに原材料の特徴を知っている当社のノウハウを活かすことが出来ると考えています。
諸冨 和馬さん
株式会社種商代表取締役
新卒でブリヂストン社に入社。
約8年間、開発部門で材料設計に携わった後、株式会社種商に入社。
2016年より現職。
株式会社種商
http://www.tanesho.co.jp/
昭和23年設立。
米穀物や豆などの卸販売から開始し取扱品種トップクラスの老舗雑穀メーカー。
現在は、雑穀を使った女性向け健康食品や海外展開にも力を入れている。